Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.26
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2005  26
学会印象記
第7回国際生命倫理学会印象記
山口大学医学部医療環境学  谷田 憲俊
 11月9日から12日まで、シドニーのニュー・サウス・ウエールズ大学で開催されました。全体テーマは、「Deep Listening」で現場に重きを置いたテーマでした。平行セッションが多く参加が限られましたが、緩和ケア関連で印象に残ったことを紹介します。
 「Talking and Being Heard」セッションで、ほぼ同名タイトルの発表がスイスからあり、「正義」が重視される生命倫理ではその圏外にはじかれる患者がいるが、患者と医療者の双方向コミュニケーションに基づき弱者に配慮した生命倫理が必要と訴えていました。その発表後に話題が「浅いセデーション」に及び、それを彼女は「患者を苦しみの中に戻す恐ろしいやり方」と表現しました。参加者も、「身震いする、野蛮だ」と同調していました。日本からは、福岡の和泉成子さんが「終末期ケアにおける日本の看護師の倫理的姿勢」について、「おもいやり」など西欧文化の文脈では語りきれない日本文化的アプローチが主であると発表されました。
 学会外でのことです。心筋梗塞3回目の高齢男性が脳死に近い状態となりました。医師団が人工呼吸器停止を提案しましたが、家族が同意しません。裁判となり、病院側を支持する最高裁判決が11月11日にあり、即人工呼吸器が停止されました。12日、息子は「間違った判決だ。医療費節減の目的で助かる命が殺されている。この国の医療を何とかしなければ」と訴えていました。コメントした生命倫理学者は、「判決は妥当で医師の判断も病院の方針も問題ない」としました。そのニュースが学会の最終日に流れ、話題になりました。日本ならどうなのか、考えさせられます。
 学会では「生命倫理は人権で語れるか」というディベートもあり、国際情勢を色濃く反映した中身でした。日本人で討論に参加したのは私と木村利人教授と限られていたのが残念ですが、パーティーでは10年ぶりの出会いもあり楽しいシドニーでした。

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