Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.26
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2005  26
Journal Club
National Hospice and Palliative Care Organization (NHPCO) のresearch agenda
聖隷三方原病院ホスピス 緩和ケチーム・ホスピス  森田 達也
J Pain Symptom Manage 2004; 28: 498-496
Journal of Pain and Symptom Management 2004;28:445-450

要約
 2003年4月、米国NHPCOの主催で35名の指導的立場にある研究者が、緩和ケアにおける研究を促進する点で協力するために会合を持った。その結果、1)研究の実績のある既存機関のあいだでの意思疎通を図ること、2)診療をしながら実証的根拠を積み重ねていけるようなネットワークを構築すること、および、3)研究内容に優先順位をつけて重要な研究を見出すこと、について同意した。
 同定された優先するべき研究課題は、以下のようなものであった。1)患者・家族がホスピス・緩和ケアを選択する受療行動の決定要因の同定、2)ホスピスケアの適応を明確にするより適切な方法(生命予後の予測など)、3)最善の終末期ケアのモデルの開発(緩和ケアを開始する時期、悪性腫瘍以外の疾患の場合など)、4)minority group・小児・nursing home・刑務所などの緩和ケア、5)有効なコミュニティへの啓蒙・マーケッティングの方法、6)根拠に基づいた治療と終末期ケアの質の関係、7)症状緩和技術(症状評価の標準化、単回放射線照射、スクリーニングなど)、8)家族のQOLを向上させる方法(成長感など肯定的部分)、9)遺族ケア、10)終末期の臨床研究のインフラ・方法論の整備。
コメント
 緩和ケアにおける臨床研究には多くの困難がある。米国においても、ほとんどの緩和ケア施設が研究の必要性を感じながらも、人員・資金・教育などの点から研究を行うことはできないことを背景として、本論文が作成された。近年の緩和ケア研究の趨勢は、洗練されたプロトコールに基づいた多施設研究である。多施設研究では、施設バイアスが減り均一な対象を確保しやすくなることによって一般化可能性が上がるだけでなく、複数領域の専門家が関与することによって、研究目的・研究手段がより洗練され、統計処理や患者リクルートに関する事務作業など各施設の負担を軽減することができる。
 多施設研究では、本論文で強調されているように、既存機関の意思疎通、診療をしながら記録のできるシステム(データベース化など)、および、研究内容の優先順位づけが重要である。日本緩和医療学会においても多くの研究が発表されるが、方法論的問題(症例数が少ない、デザイン・統計解析手段が適当ではない、症状評価が標準化されていないなど)のため、欧米のpeer-reviewed journalに掲載される研究は多くない。一方、実際に使われる労力は甚大である。多施設の臨床研究グループを効率的に運用することによって、これらの問題は少なくとも部分的に解決され、より患者・家族に還元できる知見を集積しやすくなると思われる。今後、患者・家族に還元できる、臨床と並立することができる多施設の臨床研究グループを発展させることが必要であると考える。将来的には、Japan Clinical Oncology Study Groupのような一元化した組織が必要かもしれない。

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