Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.26
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2005  26
Journal Club
終末期癌患者の精神的・実存的苦悩を緩和するための鎮静
聖隷三方原病院ホスピス  金井 稔、森田 達也
Tatsuya Morita,MD
Palliative Sedation to Relieve Psycho-Existential Suffering of TerminallyIll Cancer Patients
Journal of Pain and Symptom Management 2004;28:445-450

要約
 精神的・実存的苦悩のため鎮静を受けた、患者の頻度と特徴を明らかにするために、日本で認可を受けた全ての緩和ケア病棟の代表医師105名を対象として、質問紙調査を行った。回答を寄せた者には、今までに治療抵抗性の精神的・実存的苦悩のために、持続的鎮静を受けた患者の数と、直近の患者2名について詳細を求めた。
81名(80%)が回答をした。29名(36%)は精神的・実存的苦悩のために、持続的鎮静を行ったことがあると答えた。持続的鎮静の頻度は全体で1.0%(90名/死亡総数8,661名)であり、46症例の詳細が分かった。
 鎮静が行われる直前のperformance statusは96%で3または4であり、予後予測は94%で3週以下であった。鎮静を必要とした苦悩とは、意味のなさ/価値のなさ(61%)、負担/依存/コントロールの喪失(48%)、死への不安/恐れ/パニック(33%)、自分で死ぬ時をコントロールしたいという思い(24%)、孤独/社会支援のなさ(22%)であった。鎮静前に、間欠的鎮静および専門的な精神・心理・宗教的ケアが、それぞれ94%、59%で行われた。抑うつ的患者26名の89%では、抗うつ薬を投与された。意思決定能力のある患者全員(37名)が、鎮静を希望する明確な意思表示をした。家族がいた全例において、家族の同意が得られた(45名)。
 精神的・実存的苦悩のための鎮静は、日本の緩和ケア病棟では、標準的治療で和らげられないときの例外的治療として行われている。そういった患者の全身状態は非常に悪く、苦悩は間欠的鎮静および専門的な精神・心理・宗教的ケアに対して治療抵抗性であった。鎮静は患者と家族の同意に基づいて行われた。これらの知見で、精神的・実存的苦悩のための鎮静は、釣り合いの原則と自律性の原則が適用されるなら、倫理的に許されうることを示唆している。終末期ケアにおける治療抵抗性の精神的・実存的苦悩における鎮静の役割について、より活発な議論が早急に必要である。

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