Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.25
Nov 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第25号

書評
あなたのためのがん用語辞典
編著 日本医学ジャーナリスト協会、監修 国立がんセンター
文藝春秋 文春新書393
千葉県がんセンター整形外科  安部 能成
 緩和医療の特徴のひとつは多職種によるチーム医療だといわれている。これを円滑に進めるためには、各職種の垣根を越えた共通言語を持つ必要がある。その先例としては医学的リハビリテーションがあげられよう。ここでは部門内において医師、看護師、作業療法士、理学療法士、ソーシャルワーカーなどの専門職が共通言語を持つ事に一定の成果を収めているようだが、リハビリテーション部門を越えた、外部との共通言語を持つことには必ずしも成功しておらず、がん患者を対象としたリハビリテーションが展開しない要因のひとつになっている。
 国立がんセンター総長の垣添忠生先生を総監修者に迎え、日本医学ジャーナリスト協会が編集・著作された本書は、そのような共通言語を緩和医療に携わる医療関係者のみならず、患者自身やその家族、市民団体、行政、そしてマスコミ関係者に至るまでを視野に収めて提供するものとなっている。その目的は、患者の知る権利を踏まえたインフォームドコンセントを通して、患者と医療者の信頼関係の構築に寄与し、より良い診療を実現しようとするものであるが、先述した共通言語を普及させるためのツールをとしても重要である。
 文は五十音順に449のがん用語が医学的事実に基づいて記述されるが、本文の前に丁寧な事項索引も付されている。そこには大分類として、Iがんの基礎用語、II症状・病状に関する用語、III検査・診断に関する用語、IV治療に関する用語、V部位別・死亡数順の用語、VI経過とケアに関する用語の6項目が立てられている。各々の項目には小分類があり、例えばVIでは、〈経過/術後障害/合併症〉〈栄養法〉〈疼痛対策〉〈末期がんのケア〉の4つがあり、緩和医療も含まれていることが分る。
 僅か426ページのコンパクトな新書版でありながら、およそ大切な用語を網羅している本書は携帯に便利であり、経済的にも本体定価950円で入手可能というアクセスの良さである。たしかに、緩和医療は必ずしもがんのみを対象としているわけではない。しかし、歴史的にがん治療から起こり、現段階でも多くの対象者ががん患者であることを勘案すれば、本書を緩和医療における必携書としても良いと思われた。
 ちなみに、本書においては前述したリハビリテーションという項目は立てられて居らず、近縁項目として社会復帰がある。それでも、がんリハビリテーションが単なる外科手術後の機能回復訓練と考えられていた時代から見れば半歩前進であろう。(2004年8月20日刊)

Close