Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.25
Nov 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第25号

学会印象記
International Narcotics Research Conference(INRC)に参加して
国立がんセンター中央病院緩和ケア科  下山 直人
 INRCは、さる2004.7.18-23に京都大学薬学部教授の佐藤公道会長のもとに京都パークホテルを借り切って行われた。それに参加し口演発表を行ったので報告する。あいにくの暑さであったが、三十三間堂の隣でクラッシックな趣のするホテルでの学会であった。参加人数は世界各国から約500名が集まり、オピオイドに関する基礎系の学会ということもあり1週間にわたって、朝から晩まで缶詰になりながら激論が交わされた。オピオイド受容体のクローニングに世界で初めて成功したDr. Kieffer、ノシセプチン受容体を発見したDr. Mollereauなどそうそうたるメンバーが参加し、若輩者の私はシンポジウム1において難治性疼痛に対するEndomorphineの有効性(Tulane univ., USA)とともに、オピオイドの反応性についての発表を行った。口演者の中で臨床系の医師は私一人だけであり、その他はすべて基礎系の研究者であった。基礎系の学会の特徴として、それぞれの口演が終了した時点ですべのマイクの前に質問者が列を作って待っている姿がある。発表する人間にとっては圧倒される光景であり、日本の臨床の学会ではあまりみられないがこのような積極性は今後見習っていくべきところであろう。幸い、私の発表に関しては(手前みそで申し訳ありません)、Dr.Kiefferより「基礎研究者で考えなければならないことは臨床につながる研究を行うことである。臨床において何がわかっていて何がわからないかを知ることが必要である。その意味でも臨床からの発表は非常に有用であった」というコメントをいただき、1ヶ月以上前から緊張しており、その緊張が頂点に上り詰めていただけに非常に感動した。基礎系と臨床系のトランスレーショナルリサーチは緩和医療の世界でも重要であり、臨床系での機序が不明な事象に対する裏付けを作っていく必要があると思われる。私自身も2足のわらじをはくものとして、肝に銘じたわけである。
 日本人の基礎研究者による発表もポスターを含めて多くみられた。本学会の事務局長を務められた長崎大学の植田教授は、神経障害性疼痛の発生にはLPA1が重要な役割を果たすことを一部報告した(最近、Nature Medicineにアクセプトされ新聞を賑わした)。
 東北大学の曽良教授はオピオイドの個人個人の効き方、副作用の出方に関する研究の基になる遺伝子解析のデーターを示した。いずれも緩和医療における臨床に大きく関わっている研究であり、今後のコラボレーションを期待しているところである。

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