Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.25
Nov 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第25号

教育講演3
精神症状のコントロール
演者 : 東海大学湘南校舎保健管理センター  保坂 隆
司会・報告 : 京都府立医科大学大学院精神機能病態学  河瀬 雅紀
 がん患者の3分の1には特別な心理的配慮が必要と言われ、この教育講演では、そのなかでも頻度の高いうつ病、適応障害、せん妄に焦点をあてて論じられた。まず、うつについては、「自分の患者に限って」と言う主治医の否認や、「がんだから仕方がない」という正常反応の拡大解釈などのため、うつが見逃されている恐れがあり注意を喚起された。うつ病の病態をシナプス間隙のセロトニンおよびノルアドレナリン濃度の低下から見ると、再取り込み阻害剤である三環系抗うつ薬(TCA)や選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)が治療薬として用いられる。そのなかでSNRI は、TCAで見られるヒスタミンやアセチルコリンなどの受容体遮断作用による副作用や、SSRIでみられるP-450の阻害・消化器系の副作用などを避けることが出来る。次に、適応障害は、心因反応の一種で、不安・抑うつ・混合した気分を伴うものなどのサブタイプがある。精神療法的アプローチが主な対応となり、危機介入、支持的精神療法、認知療法、問題解決技法、イメージ療法などさまざまな方法が用いられる。また、がん診療においては家族の役割も大きいが、家族の患者的側面には支持的精神療法を、治療者的側面にはスーパービジョンを行なっていく。最後に、せん妄については、hyperactiveとhypoactiveの2型があり、特に後者は見逃されている可能性がある。せん妄は、早期発見・早期治療が原則である。DST(Delirium Screening Tool)は2〜3分でせん妄のスクリーニングが出来、看護師らが用いるのに便利である。経過を追うにはDRS-R-98を用いる。治療では、環境調整や身体状況の改善に加えて薬物療法が行われ、最近では、SDAなどの非定型抗精神病薬も用いられている。
さて、限られた短い時間ながら数多くの日常診療上のヒントを得ることができ、私たちにとって大変有意義な講演であった。

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