Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.24
Aug 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第24号

書評
告知−外科医自ら実践した妻へのガン告知と末期医療
著者・訳者 熊沢健一/PHP研究所 文庫
札幌社会保険総合病院外科  中島 信久
 40歳を過ぎたばかりの妻が切除不能な「スキルス胃癌」に冒された時、夫である外科医はどう対処したのか。妻の余命を知り、幼い子供たちをかかえ、悲しみ、怒り、迷いに溢れた現実と直面することを余儀なくされる。告知に消極的な立場をとる,ある意味”よくいる”外科医が、こうした現実の中で、妻を安らかな死へ導くために、そして、子供たちと悔いの残らない別れをさせるために、全力を尽くして様々な葛藤を乗り越えていく。
 「長く生きることが許されなくても、家族みんなで支え合い、ともに感謝し、ともに謝罪し、最後にはしっかりお別れをする。そうすることで幸せな死に近づくことができる、と私は確信しています」と語る著者の言葉に、愛する人への優しさと、人としての強さを感じる。
 何のために「告知」をするのか。告知は決して最終手段でもなければ、治せないことへの「免罪符」でもなく、これを行うことでその後の医療やケアに対して、より大きな責任が生まれてくる。関わりのなるべく早い段階で真実を告げ、そして皆でその人の悩み、苦しみや不満と向き合い、思いを共有し、人生を語り合い、その人自身の存在を認めてあげることが、残された日々をその人らしく生き、納得のいくend of lifeを送ることにつながるであろう。
 この本は,現在癌に罹患している人やその家族のため、あるいは病気とは縁遠いと思っている人たちへのdeath educationのための生きた教科書であるといえよう。さらに,現場の医療に携わる立場としては,癌患者さんの9割以上が一般病院でその最期を迎える現状を考えると,初療から再発そして終末期までの一連の経過に関わりを持ち続ける立場にある外科医を始めとしたいわゆる”癌治療医”に対して,治療の様々な過程において,患者さんやその家族の生き方を謙虚に見つめなおし、こうしたことの大切さを感じながら医療やケアにあたっていくきっかけになればと思う。(2004年5月刊、275ページ、580円(税込))

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