Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.24
Aug 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第24号

書評
スピリチュアルケア学序説
著者 窪寺俊之/三輪書店
千葉県がんセンター整形外科  安部 能成
 本書は誠にタイムリーに、第9回日本緩和医療学会の開催に合わせたかのように出版された。周知の如く、日本のホスピス緩和ケアはキリスト教系の民間病院に居られたパイオニアの先生方の孤軍奮闘に始まり、今日の120を超える施設数、2400床という時代を迎えた。ところが、緩和ケアに携わる医師や看護師の拡大とは裏腹に、英語圏では人口に膾炙されているカタカナ職種、すなわち、ソーシャルワーカー、チャプレン、リハビリテーションについては未だ見るべきものが少ない、というのが、正直なところであると思われる。なかんずく、日本語への翻訳以前に、概念的説明にも苦慮することの多かったスピリチュアリティーに関連した諸問題について、ホスピス緩和ケアにおける特色の一つである多職種に向けて、共通の議論の土俵を提供しようという意欲作が、我が国における第一人者である窪寺教授の手によって刊行されたことは極めて意義深いことである。なぜなら、まさに本書に、通奏低音のように流れていることであるが、スピリチュアリティー問題は、ひとりチャプレンの占有課題ではなく、ホスピス緩和ケアに携わる全ての人々にとって、避けて通れない問題だからである。当然、専従職員には固有の視座が存在するはずであるが、そのことを序説という形態を取って巧みに処理され、むしろ、全体から俯瞰することを試みられた窪寺教授の姿勢は、学問的のみならず臨床的に患者の傍に存在する人として、チャプレンとしての実績からにじみ出るものを感じた。本文中に散見される「ケア・プロヴァイダー」に自分が含まれるか否か、の判断は読者に任されている。一度、その認識に立てば、けっしてスピリチュアリティーは自分に無縁だったのではなく、たんに認識するセンス・感覚の問題に帰着することが容易に理解できる。そして、なぜスピリチュアリティーが痛みを伴う形で表面化することが多いのか、という臨床的問題にも学問的基盤を踏まえた上で解答を与えられていた。もちろん、本書は序説であるから、あらゆる設問に解答することは想定されていない。しかし、貴重な付属資料と丁寧な索引を持つ本書は、今後の我が国におけるホスピス緩和ケアの実践、特に緩和医療学の構築に努力されている全ての人々にとって必読書となることを疑わせない。(2004年6月刊、A4版135ページ、2,730円(税込))

Close