Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.24
Aug 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第24号

施設訪問記
カンボジア医療見聞録(パートI)
聖路加国際病院  岡田美賀子
 2003年3月と10月の2回、カンボジアのナースに痛みの教育をするため、各1週間現地を訪れました。短い滞在期間でしたが、現地の医療の現状を目の当たりにし、また現地の医療関係者と交流し、非常に多くの刺激と学びを得ました。
 カンボジアを訪れるきっかけは、武田文和先生(埼玉医科大学客員教授)の「岡田さん、カンボジアに行ってみない?」の一言でした。武田先生は西太平洋地域のWHOコンサルタントで、1999年からはカンボジア保健省へ短期派遣されて、2002年には保健省主催の医師対象の研修「Cancer Pain Management」を担当し、医療用モルヒネやオキシコドンの導入計画にもご尽力されてきました。そして、2003年度はナースの教育を行おうということで、私にお声がかかったのでした。
 カンボジアでは、経済的には急速に豊かになってきていて、携帯電話がかなり普及していたり(一般電話を引くより安いということもある)、中級ホテル以上では衛星放送が見られる程ですが、町全体としてはまだまだ貧しく、日本の昭和30年代前半頃のようでした。医療の現状は非常に深刻で、ポルポト時代の虐殺で生き残った医師が49名のみだったため、医師不足、教育者不足が大きな問題となっています。看護師はといえば、3年間の看護教育が行われていますが、やはりあくまでも医師の補助としての役割が主体で、いわゆる「ケア」という発想はほとんどなく、日常生活の援助は患者さんのご家族が一緒に寝泊りして行なっているようでした。カンボジア人は非常にホスピタリティにあふれた人々ですが、現地保健省の医師はこの「ケア」の発想がないことが問題であると話していました。
 医療経済は特に深刻で、私達が見学に訪れたプノンペンの国立病院に国で初めてのテレコバルト照射機が導入されたばかりでした。CTは国に1台のみ。化学療法も国立病院でようやく日本の5年ぐらい前のプロトコールが受けられるようになったばかりといった状況で、もちろん治験といった形で極々わずかな人しかその恩恵にはあずかれません。いかに日本の医療体制が患者さん側にとっても、医療者側にとっても恵まれているかということをつくづく感じさせられました。(次号ではがんとペインマネジメントの現状について報告します。)

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