Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.24
Aug 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第24号

Journal Club
Management of major depression in outpatients attending a cancer centre: a preliminary evaluation of a multicomponent cancer nurse-delivered intervention.
名古屋市立大学大学院医学研究科  明智 龍男
Management of major depression in outpatients attending a cancer centre: a preliminary evaluation of a multicomponent cancer nurse-delivered intervention.
Sharpe M, et al. British Journal of Cancer 2004;90:310-313

【背景】
 がん患者には高頻度に大うつ病が認められることが示されている。がん患者の大うつ病に対して、薬物療法および心理療法の有用性が示唆されているものの、実際には多くの患者がこれら適切な治療を受けていないことが知られている。そこで、我々は、がん専門看護師による介入(cancer nurse-delivered intervention)を開発した。
【目的】
  本研究では、通院中のがん患者を対象として、がん専門看護師による介入の実施可能性と有用性を予備的に検討した。
【対象と方法】1999年9月から2000年9月の間に、エジンバラがんセンターの、乳がん、婦人科がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣腫瘍、大腸がん外来において、スクリーニングを経て大うつ病と診断された患者を対象とした。なお、本スクリーニングの方法および結果は、British Journal of Cancer 2004;90:314-320に詳述されている。
 研究デザインは、連続した2つのコホートを比較する非無作為化試験である。プライマリケア領域による類似の研究から、サンプルサイズは、がん専門看護師による介入群28例、非介入群28例とした。
 ベースライン評価:大うつ病の評価は、DSM-IVに基づく構造化面接(SCID)で行った(電話により施行された)。あわせて、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)およびManchester Concerns Checklistも施行した。
 評価項目:主要評価項目は、SCIDによる大うつ病の有病率とした。本評価面接は、患者の割付を盲険化された精神科医が行った。また、大うつ病の症状項目数、HADSおよびManchester Concerns Checklistも副次的な評価項目とした。
 治療方法:非介入群に対しては、通常のケアとして、担当医(general practitionerおよび腫瘍専門医)と患者に大うつ病であることを伝え、general practitionerに対しては、普段通りに治療を行ってもらうよう依頼した。介入群に対しては、前述の通常のケアに加えて、がん専門看護師による介入(cancer nurse-delivered intervention)を併用した。がん専門看護師による介入としては、1.大うつ病に対する教育的介入、2.10回以内の問題解決技法のセッション(1回30分)、3. general practitionerと抗うつ薬投与について話し合うことの奨励、4.大うつ病治療のコーディネーションとモニタリング、が行われた。がん専門看護師は、介入期間中、精神科医により週1回のスーパービジョンを受けた。がん専門看護師による介入は、週1回、病院あるいは在宅(電話を利用)にて行われた。
 実施手順:対象者からは書面による同意を取得した。1999年から2000年の2月までは非介入群に割り付け、2000年3月から8月までは介入群に割り付けた。介入群と非介入群の対象患者は、性、年齢、がんの部位および活動性に関してマッチングした。各種の評価は、介入開始後から3ヶ月と6ヶ月の時点で行われた。
【結果】
  研究の説明が行われた対象のうち、非介入群では37%(31/83)、介入群では53%(34/64)が研究への参加を拒否した。30例の非介入群の対象症例を介入群30例にマッチングした結果、両群の背景には有意差を認めなかった。主要評価項目については、3ヵ月後に28ペア、6ヵ月後に26ペアから有効なデータが得られた。
 介入群においては、各患者において平均7.3回の問題解決技法のセッションが行われた。介入期間は2−16週であり、一人に費やされた平均時間は6時間であった。介入群では、90%の患者が抗うつ薬の投与を受け、53%が十分量の抗うつ薬を投与されていた。一方、非介入群においては、53%のみが抗うつ薬を投与されており、十分量の抗うつ薬投与を受けていたものは23%であった。治療転帰を比較すると、介入群において3ヵ月後と6ヶ月後の大うつ病の有病率、症状項目数、HADSスコアおよび3ヵ月後のconcernの数が有意に低下していた。
【考察】
  今回の予備的検討の結果、がん専門看護師による介入の実施可能性および有用性が示唆された。
 腫瘍専門医は、多くの大うつ病症例を見逃していることが知られているが、先行研究からは、単にスクリーニング結果をフィードバックするのみでは大うつ病の転帰は改善しないことが示されている。従って、大うつ病の早期発見に加えて、何らかの治療的介入を提供する必要がある。今回の研究は、がん専門看護師による介入により、がん患者の大うつ病を改善し得ることを示唆したはじめての報告である。

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