Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.24
Aug 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第24号

Journal Club
乳癌患者における外傷体験、心理的苦痛、PTSDについて
京都府立医科大学大学院精神機能病態学  河瀬 雅紀
Experience of Trauma, Distress, and Posttraumatic Stress Disorder Among Breast Cancer Patients
Palmer, Steven C. PhD, et al. Psychosom Med. 2004 Mar-Apr;66(2):258-64

 DSM-IVでは、PTSDの診断として、実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事、あるいは自身または他人の身体の保全に迫る危険を含む出来事への曝露(基準A1)と、強い恐怖、無力感、または戦慄を含む反応(基準A2)とを共に満たすことが必要で、癌の診断と治療もこれに含まれる。そこで外傷的出来事としての癌の特徴を理解するために、癌に関連したPTSDの広がり、および基準A2と心理的苦痛や精神障害との関連を調べた。【方法】115名の外来通院中乳がん患者に、SCID(Structured Clinical Interview for DSM-IV)を用いてPTSD、大うつ病(MDD)、過去の大うつ病(Past MDD)、全般性不安障害(GAD)についての診断面接を行い、またHSCL-25(Hopkins Symptom Checklist)を用いて心理的苦痛を、IES(Impact of Event Scale)を用いて心的外傷後ストレス症状の評価を行った。【結果】対象者は、80%がヨーロッパ系アメリカ人で平均年齢は55.6歳であった。対象者の41%が基準A2を、また対象者のわずか4%がPTSDと診断された。一方、対象者の9%がMDD、30%がPast MDDと診断され、基準A2を満たした者の17%がMDD、11%がGAD、39%がPast MDDと診断された。また、IESの高得点者の11%がPTSDと診断され、さらに14%がMDD、11%がGAD、48%がpast MDDと診断された。そして、対象者の29%がHSCLの得点が高く、それは基準A2を満たすことと関連していた。【考察】対象者の基準A2を満たす割合(41%)は、他の外傷的出来事に暴露された集団(女性)での割合の半分以下で、また一般集団の女性と比較しても、乳癌がPTSD発症において有意にリスクがあるとは言えなかった。但し、基準A2は乳癌患者の心理的苦痛の高まりと関連があると考えられる。さらにIESもPTSDの予測性に乏しかった。以上から、癌に対する強い陰性の情動反応は一般的だが、PTSDの罹患は低く、癌患者の体験を理解するために外傷と言う枠組みを使用することは正確ではないかもしれないことが示唆された。

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