Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.24
Aug 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第24号

ポスターセッション
精神5
司会・報告 : 名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学  明智 龍男
 本年6月17−18日にかけて札幌の地で開催されました第9回日本緩和医療学会総会において、一般演題「精神5」のセッションの司会をつとめさせていただきましたので、6題の発表演題の概要および会場で交わされた質疑等につきましてご紹介させていただきます。
 関西福祉科学大学の坂口先生らのグループは、ホスピス・緩和ケア病棟の遺族調査を通して、終末期がん患者の希死念慮、積極的安楽死の要求の頻度、およびその背景に存在する臨床的要因について検討されました。その結果、各々21%、10%のご遺族が、患者さんは希死念慮、積極的安楽死の要求を訴えたことがあると報告されており、背景には身体的、心理社会的、そして実存的な様々な要因が存在する可能性があることを示唆されました。これら検討を通して、希死念慮を有する患者さんの苦悩を軽減するうえでの具体的なケアのあり方についても言及されました。フロアからは、特に実存的な苦悩に対する具体的な心理的介入についての質問が寄せられましたが、具体的な介入についてはこれからの課題の一つであるとのことでした。
 札幌医科大学の手代木先生らのグループは、緩和ケアチームに心理士が加わった経験を実際の事例を通して報告され、チームに心理士が加わることによってもたらされるケアの幅の広がりやその有効性を示唆されました。フロアとの質疑からは、わが国の現状においては緩和ケアチームへ参加可能な心理士自体が限られている現状があるものの、心理士がチームに入ることのメリットが共有できたのではないかと思われました。
 国立病院機構四国がんセンターの三上先生は、同院精神科に紹介されたがん患者315例の臨床データを報告され、地方のがん専門病院においても、頻度の高い精神症状は、適応障害、大うつ病、せん妄であることを示されました。フロアからは、精神症状を発現しやすいがん患者の背景要因などに関しての質問が寄せられました。
 国立病院機構四国がんセンターの島田先生らのグループは、内科的治療を受ける肺がんの患者さんのご家族80名を対象として、縦断的に不安、抑うつを評価した結果を報告されました。その結果、不安は入院時、抑うつは告知直後に高い傾向が認められること、およびこれらはいずれも退院時に低下傾向を示すことを示唆されました。フロアからは、わが国におけるご家族に対するケアのあり方を考える上で極めて貴重な知見であるといったコメントが寄せられました。
 奈良県立医科大学の舘林先生らのグループは、stress related growthと様々な臨床要因との関係に関する研究を紹介され、stress related growthには、病期(再発)やlocus of controlといった心理学的要因等が関連することを示唆されました。フロアからは、近年注目されているstress related growthの概念に関する質問等が寄せられました。
 名古屋大学の下山先生らのグループは、消化器がんの患者さんの病名や再発の説明後の心理状態を自己記入式評価票を用いて縦断的に検討されるとともに、不安や抑うつのスコアが高い患者さんに対して、専門家を紹介するという実践的な取り組みについての経験を報告されました。フロアからは、専門家紹介へのバリアなどに関する質問が寄せられましたが、下山先生らのグループでは、精神科医を含めたチームが有機的に機能しているとのことでした。
 今回のいずれの発表も、各施設におけるがんの患者さんの心の問題への独自の取り組みを含んだ貴重なもので、私自身興味深く拝聴させていただきました。心理士や精神科医などに加え、看護職の方々や外科医の先生方などの真摯な取り組みが含まれており、わが国におけるがんの患者さんに対する心のケアの広がりを感じさせていただけたセッションでした。

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