Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.24
Aug 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第24号

教育講演8
緩和医療における職業倫理
演者 : 熊本大学文学部  田中 朋弘
司会・報告 : 琉球大学医学部形態機能医科学講座 生理学第一分野  小杉 忠誠
 緩和医療に従事する「専門職集団」が生まれつつある現段階において、これらの専門職集団には、他の医療専門職集団にみられるのとは異なる特有な「倫理的規範」があるのであろうか。また、治癒的医療のそれと異なるものが、緩和医療にはあるのだろうか。緩和医療学の進展のためには、充分に議論されなければならない問題が残されているように思われる。
 「一般的な職業倫理」と「専門職の職業倫理」の違い等について、倫理学者の講演を拝聴すべきであるとの学会長の意図により「緩和医療における職業倫理」の教育講演が企画された。講演者の田中朋弘氏は、熊本大学文学部で倫理学を担当しておられ、「職業の倫理学」に関する多数の著作がある。本講演は「遊びと仕事」の違い等から問題点を掘り起こし、講演の糸口とした内容であった。仕事は経済的価値性を伴うが、遊びには経済的価値性を生みださない。倫理的価値性は「お金」などの他の価値で置きかえることはできない。「働く」ということは、全人格的な社会的コミュニケーションであり、社会的行動である。「誇り」をもって働くことであり自分を道具とするのではなく、目的とすることであると述べている。専門職の仕事には、特殊な役割、責任があり、働くこと一般のそれとは異なる。すなわち、専門職集団には高度な自由と自律性がある。「専門職集団の形成」には「公共善の形成」が必須であり、独自の倫理綱領によって行動の自主的規制を行っている。働くこと一般における倫理性と医療専門職、とりわけ緩和医療職の倫理性とが区別されながらも、同時にひとつながりのものとして考えなければならないだろうと提言された。仕事と遊び、仕事と家事、仕事とボランティア、仕事と労働、職業の倫理性等、身近な具体例から「職業倫理」の議論を展開できる素地がこの教育講演から我々に与えられた。

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