Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.23
May 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第23号

Current Insight
余命の宣告にまつわること
聖路加国際病院 緩和ケア病棟  斉藤 美恵
 ホスピスについての情報が多くなってきている昨今でも、“人生の最期を迎える特別な場所”と捉えている患者は非常に多い。ほとんどの患者が、入院してくる際“死”を覚悟している。その為、症状が安定し退院することが可能となったにも拘らず、大きな精神的葛藤をもたらすことがある。最期の時を安らかに迎えたいと切望している患者は、我々からみれば症状コントロールの段階であっても、生きることへの区切りをつけて入院して来る。退院することは死が先送りされるだけ、と捉える患者にとって、“死”から“生”へと心の方向転換をすることは容易ではない。
 しかし、その患者らの事例を振り返ってみたとき、余命の宣告が大きな影響を及ぼしていることが見えてきた。医療者は、やや短めに余命を宣告しているように思えるが、患者はそれを絶対的なものだと思い込み、修正することは甚だ困難である。その結果、患者の中には、実際の病状についての認知が歪み、必要以上に病状が悪いと思い込んでいたり、無意識に末期癌患者を演じてしまっているケースもあった。
 医療者が退院を勧めても全く応じない時期を経て、自分自身の病状に対する認知と実際の病状とのずれに患者自身が気付き、退院することを決心するに至った過程、心の方向転換を促す為に重要だと思われた点を幾つか挙げてみたい。
 まず、宣告された余命はあくまでも統計的なものであって、絶対的なものではないことを繰り返し説明して理解してもらうこと。患者の心情を汲み取るべく傾聴し、余命の宣告により受けた心の傷を癒すこと。余命の仕切り直しをして、これからの時間をどう過ごすかということに目を向け直すこと。患者自身がサポートされているという実感を得られるよう、医療者・家族で見守っているというメッセージを送り続けること、である。

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