Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.23
May 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第23号

Current Insight
臨床倫理相談室(員)の提案
山口大学医療環境学  谷田 憲俊
 終末期医療の倫理問題はありふれているので、先端医療や移植医療と異なり日本の倫理委員会は扱わない。患者や家族、医療者は、問題があるとわかっても相談するところはないのが現状である。多くの場合、このような倫理問題にはそれぞれが対応している。しかし、関係者が対応能力を十分に発揮して最善の選択を採用したとしても、患者も家族も医療者もそれでよかったのかと悩みを抱える。リビング・ウイルなどの事前意思表明があれば、このような場合に有用である。しかし、簡単な事前意思表明(リビング・ウイル)は不明瞭のことがあり、逆に詳しく記せば記すほど現状と合わなくなる。このジレンマを解決する手段はない。したがって、事前意思表明の存在は、方針決定後のストレスや悩みを解決する手段にはならない。そのような彼らの悩みに応えることは、患者や家族の受容に役立ち、遺族の立ち直りや医療者の職務遂行力を高めるうえで大切と考えられる。
 そこで、臨床倫理相談室(員)開設を提案したい。臨床倫理の知識と応用能力、傾聴の技能を有する医療者(パラメディカルも含めて)が存在すれば、第3者として当事者の相談に乗ることができる。実際の業務は、情報提供と支持的カウンセリングが主体になる。したがって、患者や家族、医療者の代わりに方針を決定することではなく、当事者(最終的には患者)が決断できるよう支援するのが業務となる。目的は倫理課題の解決だが、実質上は患者・家族・スタッフのケアとなる。有用性は予測できるが、試行錯誤的に進めなければならない現実もある。
 臨床倫理相談員の養成は、医師や看護師、パラメディカルを対象とする。緩和ケアに関連する臨床課題が主となるので、養成する母体は本会や関係する研究会や学会があたる。それらの母体が相互に単位を認定できるような養成講座を組織する。講座の内容は、臨床倫理と傾聴技能、コミュニケーション技能など、及びそれらの実習である。学会期間中、あるいは他にセミナーなどを開催して、規定の単位を取得したものに資格を認定する。
 現行の医療情勢で人員を割くことは不可能とも思われるが、機能的には常時連絡可能な体制を整えれば対応できると思われる。また、診療や看護の一線を引退された経験も時間もある医療者が数多いと推測される。それらの方々に参加いただければ、医療者の教育の面でもメリットがあると考えられる。現在、設置されつつある患者情報室と連携させれば、施設面でも実現可能と思われるがいかがでしょうか。

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