Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.22
Feb 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第22号

書評
在宅ホスピスケア・緩和ケア−演習形式で学ぶケアの指針
著者 川越 厚 / メヂカルフレンド社
聖路加看護大学  射場 典子
 わが国のホスピス・緩和ケアは、施設ホスピスを中心に発展してきた。本書の著者は、在宅ホスピスケアという言葉がまだない時代から在宅における看取りを推進し、実践を積み重ねてきた医師である。その経験と知識の集積をホスピス・緩和ケアの初心者や学生にもわかりやすく演習形式で展開したものが本書である。本書の内容は、第1章の「在宅ホスピスケア・緩和ケアとは」にはじまり、「相談外来」、「症状緩和」、「家族のケア」、「死亡診断」などケアの経過をふまえた内容と、在宅のみならずホスピス・緩和ケアの重要な柱である「チームアプローチ」や「死の教育」について、またよく出会う「民間療法」の問題まで、幅広い内容を網羅している。そして、内容ごとに実際の事例を提示し、Q&A方式と紙上カンファレンスというユニークな方法で読者を擬似的にその状況に置き、自分だったらどうするだろうかと考えをめぐらしながら、読み深めることを可能にしている。
 全体を通読して一番感じられることは、われわれ医療者がホスピスケアの理念をどう捉えているか、自身のケアの哲学はどうゆうものかを問う著者の視線であった。それは著者がまず自らのケアの哲学をどのように実際のケアに反映させているかを、長年の実践経験の積み重ねから語ることを通して、読者に問いかけているものであった。一方で、Q&Aから導かれる内容と解説は、現場で出会う事例に応用可能な実際的で具体的な知識である。これらの知識から、在宅という場の特徴はケアの応用ではなく基本であることが改めて理解できた。以上の内容から、在宅ホスピスケアに関心のある人のみならず、施設ホスピスでケアを提供する方々にもぜひご一読いただきたいと思う。
 最後に「ラウンジ」で著者のユーモアあふれる人柄を垣間見ることができる。末期がん患者とケアに携わる人々の“生活”をユーモアに富んだエピソードで綴り、在宅が生活の場であることを実感できる重要なコーナーに仕上がっていると感じられた。そんな楽しみにも出会える本書である。(B5版、174ページ)

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