Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.22
Feb 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第22号

書評
Robert Twycross: Introducing Palliative Care, 4th. Ed.;
Radcliffe Medical Press, 2003
千葉県がんセンター整形外科  安部 能成
 本書はパリアティブ・ケアについての入門書の最新版である。著者のロバート・トワイクロスは、世界の緩和医療のリーダーで、英国のオクスフォード大学、及びオクスフォード国際緩和医学センター所長、WHOパリアティブ・ケア協力施設を代表する人物である。本書が初版(1995)から8年目にして第4版となったことは、著者の本書にかける意気込みを感じさせるものである。
 全体は、1.一般論(死亡統計にはじまり、安楽死、希望まで)、2.ケアの心理社会的側面、3.症状対策1(疼痛緩和中心)、4.症状対策2(消化器症状・呼吸器症状・泌尿器症状・その他の症状・二次的精神症状)、5.薬物の解説、6.その後の課題、という6つの柱から構成され、それぞれ順に41, 44, 82, 77, 26, 4 のレファレンスがつけられており、ページ配分にもパリアティブ・ケア全体を視野に納めた絶妙のバランスが感じられた。日本にも改定を重ねて第4版となった緩和医療のマニュアルが淀川キリスト教病院の実践を踏まえて出されているが、疼痛緩和に傾いてきているのとは対照的であった。
 全体を貫く文体は簡潔明瞭であり、さらに分かりやすい表や図が用いられており、初心者には親切な解説であると思われた。特に179−180ページのイラストは技術論を超えて、パリアティブ・ケアの本質をイメージしたものとして諸兄姉に推薦させて頂きたい。
 なお、パリアティブ・ケアが浸透しつつある最近の東ヨーロッパにおいては、本書が英国の援助の下に教科書として使われていると、ポーランド、ラトヴィア、ルーマニア、の先生方から伺った。諸先輩の御努力によりパリアティブ・ケアが展開しつつある我が国においても、本書の水準を念頭に置いておかないと、数年後には東欧諸国に追いつかれてしまいそうな可能性を感じさせられた。此処の臨床家はもとより、すでに英国及び欧州の、複数の看護や医療関係のジャーナルから評価されている本書は、国際社会とのつながりを無視し得ない日本の関係者にとっても見落とせないものとなるに違いない。(A5版、190ページ、価格20ポンド(英国)/40.80ユーロ(欧州大陸))

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