Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.22
Feb 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第22号

Current Insight
一般病院における終末期がん患者のケアに対する看護職の困難感
東京大学大学院医学系研究科 成人看護学/ターミナルケア看護学  笹原 朋代
Sasahara T, Miyashita M, Kawa M, Kazuma K.
Difficulties encountered by nurses in the care of terminally ill cancer patients in general hospitals in Japan. Palliative Medicine 2003; 17: 520-6.

 わが国において、多くのがん患者は一般病院で亡くなっているのが現状である。治癒を目指す患者とともに根治的な治癒が難しくなった患者をケアすることは、医療者にとって様々な点で難しく、ストレスフルであることは、現場の声としてよく聞かれている。
 本研究では、終末期がん患者のケアのどの側面にどの程度困難を感じているのかを具体的かつ定量的に明らかにするために、緩和ケア病棟を有しない一般病院3施設の一般病棟に勤務する看護職534名を対象として自記式質問紙調査を行った。回収票は450票(84.3%)、有効回答票は350票(70.1%)であった。終末期がん患者をケアするうえでの困難感を尋ねた80項目を因子分析した結果、「患者・家族とのコミュニケーション」、「看護職の知識と技術」、「治療・インフォームドコンセント」、「自分自身の問題」、「患者・家族を含むチームとしての協力・連携」、「環境・システム」、「看護職間での協力・連携」、「看取り」の8つの領域に分類された。
 困難感が「非常にある」との回答が多かった上位5項目を挙げると、「患者とゆっくり話す時間がないこと(62%)」、「自分自身が未熟であること(56%)」、「家族とゆっくり話す時間がないこと(55%)」、「十分な病名・病状説明がなされていない患者への対応(53%)」、「患者から死に関する話題を出された時の対応(47%)」であった。全体として、終末期がん患者のケアに対する看護職の困難感は高く、特に「患者・家族とのコミュニケーション」と「看護職の知識・技術」の領域に属する項目において高かった。
 困難感は個人の意識の高さを反映している部分もあるため、「高いことはよくない」と一概に言うことは難しい。この点を明らかにするためには、更なる研究が必要であろう。本研究の結果は、終末期がん患者のケアにおける看護職の顕在的なニードを示したものと捉えることができ、今後一般病棟で院内緩和ケアチームがどのように活動していくのか、あるいは卒前・卒後の緩和ケア教育における内容やプライオリティを考えるうえで示唆を与えるものと思われる。

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