Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.22
Feb 2004

日本緩和医療学会 ニューズレター第22号

Current Insight
標準的緩和治療、鎮静、安楽死に対する医師と一般人口の見解の相違点
聖隷三方原病院 ホスピス  鄭  陽・森田 達也
 苦痛緩和のための鎮静はしばしば終末期患者に必要とされるが、標準的緩和治療、鎮静、安楽死の相違については一致した見解がない。これは鎮静の定義と概念が定まっていないためであり、我々は鎮静の概念として「標準的治療に反応しない耐え難い苦痛を意識低下させることにより軽減する医療行為」を提案した1。本研究では、医師と一般人口に行われた意識調査の結果を用いて、標準的緩和治療、鎮静、安楽死の類似点と相違点を多次元尺度法を用いて検討することによって、提案した鎮静の概念的妥当性を検証した2。
本研究の最も重要な結果のひとつは、医師も一般人口も、浅い鎮静・間欠的な深い鎮静を標準的緩和治療と区別していたことであり、浅い鎮静・間欠的な深い鎮静は、鎮静のサブカテゴリーとして扱うことが推奨される。
次に重要な、かつ、もっとも印象的な結果は、持続的な深い鎮静を、医師は浅い鎮静・間欠的な深い鎮静に近いものと考えているのに対して、一般人口は安楽死により近いものと捉えていたことである。この解釈として、医師は医療行為の目的を重要視するの対して、一般人口は目的を行為の結果ほど本質的ではないと考えている可能性がある。また、医師は医療行為が患者の身体状況に与える影響に関心があるが、一般人口は意識状態や知的活動に与える影響により重きをおいているのかもしれない3。一般人口において、持続的深い鎮静は他の鎮静と異なる意味を持っていることが示唆されるため、他の鎮静と分けて考えるほうが合理的であると考えられる。
医師も一般人口も、標準的緩和治療、鎮静、安楽死を区別しているが、医師と一般人では持続的な深い鎮静の位置付けが異なることが判明した。したがって、鎮静という言葉を、浅い鎮静、間欠的な深い鎮静、持続的な深い鎮静のように明確に定義したうえで、区別して使用することを推奨する。これにより鎮静に関する研究や議論の質が向上することが期待される。

【 参考文献 】
1. Morita T, Tsuneto S, Shima Y. Proposed definitions of terminal sedation. Lancet 2001; 358: 335-336.
2. Morita T, Hirai K, Akechi T, Uchitomi Y: Similarity and difference among standard medical care, palliative sedation therapy and euthanasia: A multidimensional scaling analysis on physicians’ and the general population’s opinions. J Pain Symptom Manage 2003; 25: 357-362
3. Steinhauser KE, Christakis NA, Clipp EC, McNeilly M, McIntyre L, Tulsky JA: Factors considered important at the end of life by patients, family, physicians, and other care providers. JAMA 2000; 284: 2476-2482.

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