Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.21
Nov 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第21号

Cancer pain and psychosocial factors:
a critical review of the literature
国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部・国立がんセンター東病院精神科
明智 龍男
Cancer pain and psychosocial factors: a critical review of the literature
Zaza C, et al. Journal of Pain and Symptom Management 2002;24:526-542

【背景】
  痛みのマネージメント方法の進歩にも関わらず、がん性疼痛は十分に治療されていないことが明らかになっており、不適切な疼痛治療の割合は16-91%にのぼると推測されている。適切な疼痛マネージメントを達成するうえで幾つかの障害が存在することが知られているが、このような要因の一つとして痛みに対する不十分な評価が知られている。また、適切な痛みの評価には、がんの疼痛体験に重要な役割を果たす全ての要因に対する包括的な評価が必要である。従って、痛みに関連する重要な心理社会的要因を同定することは、がんの慢性疼痛の評価を改善することに寄与する可能性がある。
【目的】
  以上のような背景を受け、本研究では、以下の3つを目的とした。1.がんの慢性疼痛と心理的苦痛、ソーシャルサポート、そしてコーピングとの関連についてのエビデンスを批判的にレビューする。2.そこから得られた知見をもとに臨床的に推奨される事項を導き出す。3.今後の研究に対する推奨事項を明らかにする。
【対象と方法】
  Medline(1980-2000年)、CANCERLIT(1966-2000年)、PsychINFO(1984-2000年)などの検索エンジンを用いて論文の電子検索を行った。検索用語としては、pain、cancerに加え、adaptation、psychological distress、anxiety、depression、coping、social supportなどを用いた。記述的な論文や総説は今回の検討からは除外した。抽出された論文に対しては、その研究デザインに応じて研究の質を検討し、その問題点を系統的に整理した。また、得られた結果を総括し、痛みと心理社会的要因との関連について、そのエビデンスレベルを5段階(insufficient、inconclusive、moderate、strong、very strong)で評価した。
【結果】
  総数31編の論文が今回の検討対象となった。心理的苦痛についての19編の研究報告のうち14編の研究が、痛みの増強に伴い心理的苦痛が有意に増悪するという結果を示していた。心理的苦痛と有意差を認めた研究に関しては、サンプルサイズが35〜1309(平均228)、相関係数が0.19〜0.51、オッズ比が1.2〜6.0であった。ソーシャルサポートに関しての8編の研究のうち7編の研究が、痛みの強さと社会的活動度およびソーシャルサポートの低下との間に有意な関連があることを示していた。ソーシャルサポートと有意差を認めた研究に関しては、サンプルサイズが84〜707(平均218)、相関係数が-0.17〜-0.58、オッズ比が1.67〜2.30であった。コーピングを扱った4編の研究のうち3編の研究が、catastrophizingというコーピングストラテジーを用いることが、より強い痛みに関連していることを示していた。コーピングと有意差を認めた研究に関しては、サンプルサイズが45〜88(平均69)、相関係数が0.19〜-0.56であった。一方で、コーピングに関しての研究結果の臨床的意義は明確でなく、その他の研究においては痛みと様々なコーピングとの間に多彩な結果が示されていた。
【考察】
  1. 前述の結果から、痛みと心理社会的要因との関連についてのエビデンスレベルは、痛みと心理的苦痛とは強い(strong)関連、痛みとソーシャルサポートとは弱い(moderate)関連を有することが示唆されるものの、痛みとコーピングに関しては現時点においては結論できない(inconclusive)と考えられた。2. 包括的な慢性疼痛の評価としては、心理的苦痛に対するルーチンのスクリーニングを行うべきであることが示唆された。3. 今後、研究を行ううえで推奨される事項は、十分なサンプルサイズ、高い参加率、標準化された評価方法の使用であることが示唆された。また、ソーシャルサポートとコーピングに関しての更なる研究が必要であることが示された。

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