Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.21
Nov 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第21号

悲嘆は一つの臨床単位として見なし得るか
京都府立医科大学精神医学教室  中谷 真也・河瀬 雅紀・正木 大貴・福居 顯二
Traumatic Grief as a Disorder Distinct Related Depression and Anxiety: A With Bereaved Mental Health From Bereavement-Replication Study Care Patients
Paul A. Boelen, M.A.
Jan van den Bout, Ph.D.
Jos de Keilser, Ph.D.
Am J Psychiatry 2003;160:7

 これまでのいくつかの研究において、外傷性悲嘆の症状は、死別に伴ううつや不安とは異なった死別に伴う感情的苦痛の様式を構成することが示されてきた。しかし、それらは配偶者を病気で亡くした高齢者の遺族を対象としたものであり、Boelen P. A.らは、他の集団において追試することによって、これらの結果が一般化できるかどうかを試みている。
目的:第一度親族(配偶者、両親、子供、兄弟姉妹)の死後、悲嘆の問題のために援助を求めてきた外来患者集団において、病的悲嘆(外傷性悲嘆)の症状が死別に伴う抑うつおよび不安症状とは異なることを確認することである。
方法:データは、オランダの103名の精神科外来患者から得られた。外傷性悲嘆は30項目にわたる外傷性悲嘆評価尺度によって測定し、抑うつと不安は症状チェックリスト(17項目の抑うつ尺度と10項目の不安尺度)を用いて測定した。3つの症状群の特徴は主な因子軸によって決定され、分析における制約上から各々の尺度のトータルスコアと最も強く関連する項目群が用いられ、病的悲嘆評価尺度からは10項目、症状チェックリストからは5項目の抑うつ尺度と5項目の不安尺度が選択された。
結果:これら患者の病的悲嘆評価尺度の平均得点は第一度親族を失った250人のオランダ人サンプルの平均得点よりもかなり高かった。そして因子分析の結果から3つの因子が得られ、それぞれは外傷性悲嘆(因子負荷量0.62〜0.84)、抑うつ(因子負荷量0.74〜0.78)、不安(因子負荷量0.62〜0.80)の各症状に対応した。
考察:これらの結果から、外傷性悲嘆の症状と、死別に伴う抑うつおよび不安の症状とは異なるというこれまでの結果が確かめられた。このことは、DSM-Wとは異なって、外傷性悲嘆の症状は死別に伴ううつや不安とは異なる臨床単位として存在しうることを示しており、今後このような症候群に対応した様々な治療法が提案されるであろうことが期待される。

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