Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.21
Nov 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第21号

成人がん患者の疼痛測定尺度の妥当性と信頼性
東京大学大学院医学系研究科 成人看護学/ターミナルケア看護学  木村理恵子
Mark P. Jensen
The validity and reliability of pain measures in adults with cancer. The Journal of Pain 2003;4(1):2-21

【背景】
 がん性疼痛治療の臨床試験の際には、信頼性と妥当性の両方を備えた疼痛測定尺度が使用されるべきである。がん性疼痛のアセスメントには多くの種類の測定尺度が使用されており、それらの計量心理学的特性についての研究も多数発表されているが、包括的なレビューは行われていない。ある測定尺度を他のものに比して特に選択するについての明白なガイドラインも存在していない。
【目的】
 1)がん性疼痛測定尺度の信頼性、妥当性検討を含んだ研究の確認 2)これらの研究に使用された測定尺度の計量心理学的特性に関する結果の要約と統合 3)これらの測定尺度の使用に関する勧告 4)がん性疼痛測定尺度の信頼性、妥当性に関する今後の研究に向けての勧告をすることである。
【方法と結果】
 MEDLINEによる1999-2001年の文献検索で得られた273の文献から、164の文献がinclusion criteriaによって選択されレビューされた。(文献リストは www.jpain.org で参照できる。)
 その最も重要な結果は、VAS,NRS,VRS等の一般的に使用されている単項目の疼痛強度尺度が、異なったがん患者のサンプルにおいて尺度として適切な信頼性と妥当性を持っていたことである。測定の実施に関しては、高齢者やオピオイド多量使用患者に対して、VASによる疼痛の強さの測定は最善の選択ではないことが示された。一方NRSは、ほとんどの患者で実施に耐えられ、少なくともVASよりも感度と妥当性が認められた。しかし対象に著しく認知障害がある患者が含まれている場合は、4ポイントのVRSの方が適していると考えられる。多項目の疼痛強度測定尺度ではBPIが一般的であり、計量心理学的な特性に優れていることが、高い内的整合性、基準関連妥当性を含めて示されている。がん性疼痛による障害、疼痛緩和、疼痛の部位、質、時間的側面の測定尺度について計量心理学的特性を検討した研究は少なく、これら尺度の信頼性、妥当性に関連して導き出される結論に限界が生じている。代理人による疼痛の測定は、患者が評定できないときには有用であるが、患者が自己申告できるときには代理人によって置き換えられるべきではない。
【結論】
 今後、がん性疼痛の測定尺度を開発し、精錬し、評価する研究がなされることにより、研究者や臨床家が特定の尺度を選択する際に利用できる情報が得られるであろう。アセスメントの知識や選択肢を増すことが、がん性疼痛のよりよい理解と緩和に寄与することとなる。

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