Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.21
Nov 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第21号

看護婦がみた食事と水分を拒否して死を早めるホスピス患者
山口大学医学部医療環境学  谷田 憲俊
Ganzini L, Goy ER, Miller LL, Harvath TA, Jackson A, Delorit MA. Nurses' Experiences with Hospice Patients Who Refuse Food and Fluids to Hasten Death. New England Journal of Medicine 2003;349:359-365

 オレゴン州でホスピスケアに従事する全ての看護婦に、過去4年以内に水分と栄養を拒否して死を早めた患者を看た経験があるか郵便アンケート調査を行った。調査項目は、その経験の有無、患者が死を早めた理由、死ぬまでの「安らかさ」、「苦痛」、「生活の質」、それら患者の家族について看護婦からの評価である。
 対象となった看護婦429名中、307名(72%)が回答した。そのうち102名(33%)が自発的に水分と栄養を拒否して死を早めた患者を看た経験があると答えた。それら患者の85%は15日以内に死亡した(平均10日)。患者がそれを選択した理由では、「死の準備ができている」「延命に意味がない」「生命の質が低い」を重要とみていた。重要でない理由には、症状、抑うつ他の精神病、経済的な負担、悲惨な死をみた経験、社会的支援の欠如が挙げられた。死の状況は、「非常に悲惨」を0、「非常に良好」を9とした10段階評価で、それら患者の平均値は8だった。ほとんどの患者は5以上に評価され、悲惨な死(4以下)は8%だった。また、「医師による自殺幇助」を選択した55名のホスピス患者と比較すると、「水分栄養拒否者」は高齢で、死を支配することを望まず、精神科受診を望まない傾向にあった。
 考察の中で著者らは、調査されたオレゴンは「医師による自殺幇助」が合法化され終末期ケアの質・量ともに他地域と異なる可能性があること、死に関する自己決定について患者の意識も高いと考えられることなどを指摘していた。地域性によるバイアスはあるにしても、この結果から水分と栄養を拒否して死を選ぶホスピス患者は2週間以内に「良い死」に至ることが示された。なお、付随する論説には、この調査結果が“安楽死”推奨につながりかねないとの懸念から、発表の是非まで議論されたことが紹介されている。

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