Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.21
Nov 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第21号

ワークショップ
緩和医療教育
座長 : 昭和大学横浜市北部病院  高宮 有介
日大板橋病院  白土 辰子
 今回のテーマ「緩和医療学の確立をめざして」にそって、ワークショップに「緩和医療教育」が取り上げられたことは、まさに時を得た企画と言える。いまだかつてこれほど多くの参加者が教育の必要性について切実な思いを抱いて討議したことがあったであろうか? 6名の発表者はそれぞれの立場から問題点を明確に提示した。卒前医学教育に関して4題、卒後研修医教育1題、専門医師教育1題であった。
 はじめに黒子は17の大学で実施中のシラバスを検討した結果、緩和医療教育カリキュラムを早急に体系化する必要性を訴え、医学生向けの教科書作成の計画があることも述べられた。また、斉藤はわが国の医学部緩和ケア教育の現状調査によると大学間に格差があるため効果的なカリキュラム作成と教える側の質を確保する必要性を述べ、ついで庄司は医学生には患者・家族の立場で考えるロールプレイが有効であることを授業の記録映画を上映することにより示し会場の共感を誘った。萩原は所属大学で実施中の授業プログラムと学生の評価から緩和ケアに対するモチベーションを高める教育効果について報告した。卒後教育では市丸は研修医に対する緩和ケア病棟ローテートで得られる教育効果についてアンケートにもとづいて発表、さらに木澤は緩和ケア病棟だけでなく一般病院でもニードが高まっていることを念頭に緩和医療専門医制度の確立を提言した。木澤は専門医制度の構築にあたり、米国の前例を元に自己学習プログラム作成を計画中との報告があった。
 発表者間でロールプレイの方法論を含め、さらに問題点を深めた話し合いの後に、会場からは緩和医療を専門としない医師にも教育は必要であること、チーム医療の認識とコミュニケーションスキルの習得が基本であること、緩和医療を国家試験ガイドラインへ組み入れることで教育が促進されること、など意欲的に意見の交換が行われた。また、会場より、緩和ケアの医師に必要な素養として、「コミュニケーションとチーム医療」といったキーワードが述べられた。
 緩和医療学会でも、緩和医療のスペシャリストを教育・認定する必要性が叫ばれ始めている。緩和医療の専門性を持った専門家の教育、認定とともに、一方で多くの臨床家の緩和医療における基礎的な教育やレベルアップが必要である。そういった意味でも、卒前教育、卒後の研修医の教育、そして、実際にがん患者に向き合う一般臨床医と専門家の教育といった4つの柱が必要になってくると考える。緩和医療は、他の専門家とは違い、多くの診療科にまたがり、また、コアとなる全人的ケア、家族のケア、チーム医療は全ての臨床医に必要な事項である。緩和医療の専門性を高めながら、裾野である卒前、卒後の教育を広めていくことは重要な活動である。今後もこのテーマの議論が続いていくことを願う。

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