Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.21
Nov 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第21号

巻頭言
緩和医療の標準化と普及について
国立療養所西群馬病院  斎藤 龍生
 緩和医療や末期医療の研究会・講習会は各地で盛況であるが、聴いて欲しいと思う医療従事者は参加せず、個々の医療従事者の思いの発散の場となってしまうことも多い。こういった状況の中で、EBMに基づいた研究の発表の場として立ち上がった緩和医療学会は、緩和医療を標準化し普及させるという大きな役割を担っている。標準化には十分な症例数と、客観的評価に耐えうる優れたプロトコールデザインによる前向きの研究が要求される。治療の副作用や症状マネージメントのための研究に加えて、診断や検査時の緩和医療、病名説明後の支援の標準化など、今後望まれる研究である。標準化されたEvidenceも緩和医療学会だけで共有するのではなく、広く他学会に発表していくことも重要である。癌治療学会に緩和医療部門を発足しようとする本学会の働きかけは、癌医療に直接携わる医師に緩和医療を紹介する機会となるであろう。
 緩和医療の考え方は、今日社会が求めている患者サイドに立った医療のモデルとなる。度重なる診療報酬改定は、病院経営に危機をもたらす一方で、適正なインフォームド・コンセント、患者のQOL向上、医療安全などに対する病院の姿勢を診療点数加算・病院機能評価などで評価としようとする流れがある。さらにリスクマネージメントの面からも、インフォームド・コンセントやコミュニケーションのスキルを磨いていかなければならない病院の事情の背景もある。今回の導入された緩和ケア加算は、課題もあるが一般病棟での緩和医療の普及に物理的な力となることは間違いない。診療報酬請求に医療評価を前提とした点も注目される。医療従事者が緩和医療の本質を理解しその輪を広めていくことは大切であるが、人はその方法だけではなかなか動いていかない。医療制度の流れ、病院経営上の必要に迫られた関心事を良く掴み、それに応じた緩和医療の普及方法を展開していくことが効果的である。今後は、セカンドオピニオンに対する診療報酬への反映、アドボカシーの視点に立った医療相談室の普及、患者さんの心理や行動に関する医学教育プログラムなど、長期的展望にたった研究にも積極的にとり組む姿勢が必要である。

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