Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.20
Aug 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第20号

Journal Club
Factors associated with the wish to hasten death: a study of patients with terminal illness
国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部
国立がんセンター東病院精神科  明智 龍男
Kelly B, Burnett P, Pelusi D, et al.
Factors associated with the wish to hasten death: a study of patients with terminal illness
Psychological Medicine 2003;33:75-81

【背景と目的】
 終末期がん患者にみられる希死念慮を巡る臨床的諸問題に関しては、様々な議論が行われている。自殺幇助や安楽死に対しての一般人口や医療者の態度に関する研究は数多く行われている一方で、実際に終末期患者を対象とした研究は限られている。臨床的な評価や希死念慮の背景に存在する治療ニーズを理解するためには、終末期がん患者の希死念慮発現に寄与する要因を明らかにする必要がある。本研究は、異なる医療セッティングにおいて緩和ケアを受けている終末期がん患者を対象として、希死念慮に関連する臨床的な諸要因を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
 ブリスベーンにおいて、ホスピスに入院中、在宅緩和ケアサービス、一般病院で緩和ケアを受けている終末期がん患者を連続的サンプリングし、これら患者を対象として、希死念慮に加えて、心理状態(不安、抑うつ)、社会的要因(家族機能、ソーシャルサポート、他者への負担)、身体症状を調査した。希死念慮は、Wish to Hasten Death Scale(WTHD)を用いて評価した。身体症状はMemorial Symptom Assessment Scale(MSAS)、不安と抑うつはHospital Anxiety and Depression Scale、家族機能はFamily Relationships Index(FRI)、ソーシャルサポートはSocial Support Scale、他者への負担については面接で評価した。
【結果】
 研究期間中、1299名の患者が対象施設に紹介されたが、このうち適格条件(重篤な認知機能障害がない、研究に参加可能な身体状態にある、英語が話せるなど)を満たした患者は518名であり、そのうち256名(全体の19.7%)が研究への参加に同意した。対象の14%に強い希死念慮が認められた。希死念慮に関連する臨床的要因は、抑うつ、不安、ホスピスへの入院、他者への重荷になっているという感覚、凝集性の低い家族、乏しいソーシャルサポート、身体症状であった。
【考察】
 終末期がん患者の希死念慮には、心理的および社会的要因が関連していた。このことより、終末期がん患者に適切な治療的介入を行うためには、心理社会的要因の評価を行う必要があることが示された。

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