Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.20
Aug 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第20号

Journal Club
末期癌患者における死の絶望に対する心霊的安寧の影響
兵庫医科大学消化器内科  谷田 憲俊
McClain CS, Rosenfeld B, Breitbart WB. Effect of spiritual well-being on end-of-life despair in terminally-ill cancer patients. Lancet 2003; 361: 1603-1607

 終末期患者は、致死性や人生の意味と目的、大いなる力が存在するかなどの問題と苦闘する。それら患者の心霊的安寧と抑うつ、死の絶望との関連を検討した。
 ニューヨークの緩和ケア病院で、余命3ヵ月以下と予想される160名の患者をインタビューと自己記入式、評価者記入式の調査票で評価した。評価項目は、心霊的安寧、認知、うつと自殺願望、悲観と絶望、死を早めたい願望、社会的支援、自覚症、身体的活動度の全8種である。心霊的安寧は、「心の和合面」と「安らぎ面」から成る「意味尺度」と「信仰への安らぎ面」と「信仰への信念面」をみる「信義尺度」から成る。
 その結果、心霊的安寧は「死を早めたい願望」と「絶望」、「自殺願望」と統計学的に有意に相関していた。回帰分析では、心霊的安寧がそれぞれの評価項目において抑うつとその関連因子より強い寄与因子として抽出された。加えて、抑うつは心霊的安寧が低下している場合に「死を早めたい願望」と関連するが、心霊的安寧が良好な場合はそれとは関連しない。また、「絶望」、「死を早めたい願望」及び「自殺願望」において、「意味尺度」の方が「信義尺度」より有意に高い関連性を有していた。抑うつが「死を早めたい願望」を助長することに対しては心霊的安寧が緩和する作用を及ぼすが、「抑うつ」と「絶望」や「自殺願望」との関係には作用しない。これは、カソリック信者が多かったため自殺は教義で禁じられているための現象と考えられる。 
 既に、心霊的ケアとして「人生の意味」に焦点を当てたグループ・ワークが行われている。今後は、どのような心霊的ケアが有効か、あるいはより適切かなどの研究が必要と考えられる。(訳者注:スピリテュアルを心霊的と訳すなど用語の用法は便宜的である。厳密さを求める方は原文に当たられたい。)

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