Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.20
Aug 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第20号

Current Insight
貧血とQOL
埼玉県立がんセンター・デイケアセンター  小林 国彦
 近年、化学療法中よる貧血を予防するためのエリスロポイエチン使用に関する米国癌治療学会(ASCO)のガイドラインが発表されている(JCO 20:4083, 2002)。ヘモグロビン10 g/dL以下でエリスロポイエチン(Epoetin)を使用し、10から12 g/dLでは他の臨床状況により相対的適応とし、ヘモグロビン12 g/dL以上を目指す内容である。現在、国内でエリスロポイエチンの適応拡大(腎不全ではすでに保健収載済み)のための治験が進行中である。実は、過去にも国内臨床試験が行われたが、失敗に終わっている。その当時、QOLの評価があまり重視しなかったのではと推測する。ASCOガイドラインを作成する論拠となった論文は、Retrospective surveyとして、French anemia audit (Coiffier B, Eur J Cancer 2001)、UK anemia audit (Barrett-Lee, Br J Cancer. 2000)、Prospective surveyとして、European Cancer Anemia Survey (ECAS, Ludwig H, 2002)がある。また、Prospective randomized studyでは、2つのopen-label, community-based studies (Glaspy JCO 1997, Demetri JCO 1998)とDouble-blind, placebo-controlled study (Littewood JCO 2001)がある。これらの一連の検討で、輸血の回数より、QOLの改善が重用視されるようになった。QOLは、Functional Assessment for Cancer Therapy-Anemia (FACT-An、日本語版あり)質問票で評価されたものが多く、Physical well-being(身体症状), Mental well-being(心理状態), Functional well-being(活動性)に影響を与えることが判明している(Cella D, JCO 2003)。すなわち、QOLは、貧血の改善治療の主なend pointとなりうる。
 さて、緩和治療における貧血補正には、指針があるのだろうか。Pub-Medで検索してみると、ヘモグロビン8 g/dL以下で臨床状況を鑑みて輸血が行うのが一般的であるが、結論が出ていない(Monti M, J Pain Symptom Manage, 1996)。さらに、上記に記載したようにQOLを改善させるエリスロポイエチンの使用については、まだ、緩和領域では何も決まっていない。臨床研究の1つのテーマがありそうだ。

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