Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.20
Aug 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第20号

ポスターセッション P04 036〜040
司会 : 利根中央病院 外科  原  敬
 終末期患者に対する外科的処置の適否功罪を問う演題であった。予後の限られた、全身状態不良な終末期患者への外科的処置の適用には慎重であるべきことはこれまでにも論じられてきたが、外科的処置に本来的な疾病治療ばかりでなく、QOL概念に支えられた症状緩和という目的をも含みもたせようという場面で、さらにどのような議論が必要であるのかに関心がよせられた。
 福島県立医科大学第2外科宮本康太郎氏は、癌性腹膜炎を背景とした消化管穿孔に対して外科的処置に踏みきる際には、予想外の急激な病状の変化に患者や家族の認識が追いつけないうえに、短時間での方針決定を余儀なくされるが、こういった病状に対する外科的処置の適否に関するエビデンスを睨みつつも、患者の自己決定を優先すべきであると結論づけた。参加者からは、患者の自己決定に臨んで、「外科的処置を受けない」という選択肢も医療者が明確な形で提示することの重要性を確認する意見が出された。防府胃腸病院楠目健一氏は、集学的治療によって在宅療養が可能となった末期直腸癌の症例をもとに、執刀した外科医が最も患者の状態を把握していると考えられることから、緩和医療においてもっと中心的役割を果たしていく必要性を強調した。曙会シムラ病院外科岩田尚士氏は、終末期患者の胸腹水コントロールにおけるOK-432投与の有用性を論じた。有効性に関しその背景因子の検討から、有効群には治療開始時の全身状態が比較的良好な例が多いと述べた。育和会記念病院外科西森武雄氏は、大腸悪性狭窄にともなうイレウスに対し、人工肛門造設術に代わり金属ステントを挿入留置することで排便を保つことの可能性を論じたが、現行医療保険制度では適応が認められていない点も指摘した。東邦大学戸倉夏木氏は、癌性腹膜炎に対する外科的処置は侵襲的であるがゆえにその適応判断には慎重を要すると述べ、患者自身への真実告知が前提であるとしながらも、手術後に症状改善が得られなかった事例では、かえってQOLの低下が著しいことも指摘し、終末期患者への外科的処置の問題点をあらためて強調した。

Close