Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.20
Aug 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第20号

教育講演
緩和医療と生命倫理
−terminal sedation の法律的に安全なガイドライン−
司会 : 国立がんセンター総長  垣添 忠生
 鳥取環境大学学長、加藤尚武先生による上記講演が、平成15年6月27日午前、約1時間にわたってなされた。私は座長を務めたので、お話のポイントをまとめてお伝えしたい。
 緩和技術の理想とは、患者の意識水準を下げることなく、身体的な苦痛から解放することであり、対応能力を保ったままでの静かな死の受容を可能にすることである。さらに緩和によって死期が早まるという因果関係がなくなることもまた、緩和技術の理想としての目標であろう。
 現実にはこの目標は達成されていない。安楽死に関してドイツ、フランスの生命倫理では、1. 死に際の看護→医療者の義務、2. 消極的安楽死→延命措置の断念、3. 間接的安楽死→生命短縮をともなう苦痛緩和、4. 積極的安楽死→直接的帰結として死を意図する措置、5. 早期安楽死→重度障害新生児の治療停止、に分類されている。このうち、安楽死として許されるのは、間接的安楽死までであって、この場合、意図しない付随結果として生命短縮をともなう苦痛緩和措置、あるいはあくまで苦痛緩和が目的であって、死を直接目標とはしない、ことが重要である。つまり、法律的に適法とされることは、間接的安楽死および消極的安楽死までであり、積極的安楽死および医師による自殺幇助は違法と考えられている。
 結論として、加藤先生は、
 緩和の目標は、人間の尊厳にふさわしくない身体的な苦痛の回避。
 患者の同意は、延命よりも尊厳の維持を優先するという患者の選択を確認するために必要である。
 自殺権は、緩和医療の理想とすべき目標ではない。生命力と対応能力を失わせることのない緩和技術の可能性を追求し、「積極的安楽死の必要」をなくすることが最も重要であろう。
 と述べられた。法律と倫理という難しい問題に関するお話だったので、必ずしも分りやすくはなかったが、こうした問題をつきつめて考えるよい機会となった。

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