Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.19
May 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第19号

Journal Club
Changes in physical functioning and quality of life in patients with cancer: response shift and relative evaluation of one's condition
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻・理論疫学
日本メジフィジックス株式会社
大西 良浩
Changes in physical functioning and quality of life in patients with cancer: response shift and relative evaluation of one's condition
Hagedoorn M, Sneeuw KC, Aaronson NK.
J Clin Epodemiol 2002; 55:176-83.

 がん患者の報告するglobal QOL(包括的なQOL)は予想外に高く、一般人口のそれと変わらないとする報告がある。この事実の背景には、病気という負のインパクトに対抗するための認知行動的な反応が想定されている。すなわち、自分と似た状況におかれた第三者を想定し、自分の状況を相対的に位置付けることによって納得を得るという考え方である(relative evaluation)。この論文では、つぎの仮説を検証している:「他の人と比較して自分が良い状態であると感じている人では、身体機能が低下しても包括的なQOLが保たれるが、他の人と同等かそれ以下と感じている人では、身体機能の低下に伴って包括的なQOLも低下する」。
 化学療法を受けているがん患者240人を対象に、3ヶ月の間隔で2回にわたり、身体機能とQOL(emotional functioning、global QOL)を調査した。身体機能については、患者本人のほか、患者の親近者と研究スタッフによる評価も行った。質問紙としてEORTC QLQ-C30またはECOG performance stasus scaleを用いた。Relative evaluationは「同じような状況の人と比較して、あなたのいまの状態はどうですか」という問いに対する7段階の回答によって評価した。
 Relative evaluationのスコア別に、3ヶ月間の身体機能の変化とQOLの変化との関係を検討したところ、「自分の状態は他の人よりもよい」と答えた患者では、身体機能が低下してもQOLのレベルは保たれた。これに対して「自分の状態は他の人と同じ」〜「他の人よりも悪い」と答えた患者では、身体機能の低下に伴ってQOLのレベルも低下した。
 客観的な健康改善が見込まれない場合、認知行動的戦略が患者のwell-beingの維持に重要となる可能性が指摘されているが、上記の結果はこの点への介入を支持するものであると著者は述べている。

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