Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.19
May 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第19号

Journal Club
Dignity in the terminally ill: a cross-sectional, cohort study
国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部  明智 龍男
Dignity in the terminally ill: a cross-sectional, cohort study
Chochinov HM, et al
Lancet 2002; 360:2026-2030

【目的】
  死にゆく患者のケアに際して、尊厳(dignity)を考慮することの重要性はしばしば示唆されている。一方で、死にゆく患者を実際の対象として、尊厳に関して言及した研究報告はほとんどない。今回の研究は、終末期がん患者を対象として、患者が感じている尊厳の状況を把握することと、尊厳に関連する要因を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
  対象は、カナダの2つの緩和ケア病棟でケアを受けている終末期がん患者とした。適格条件は、18歳以上、認知機能障害がないこと、インフォームドコンセントが得られる、研究に参加可能な身体状態にあること、推定予後が6ヶ月未満、英語による読み書きが可能、せん妄や痴呆がないこと、とした。対象患者からは、書面による同意を取得した。最終的に213名の終末期がん患者が研究に参加した。これら対象に、尊厳に加え、がんに関連する症状、痛み、ADL、QOL、死への願望、不安、絶望感、生きる意思、他者への依存、ソーシャルサポート等に関して調査を行った。
【結果】
  研究に参加した患者の背景は、平均年齢69歳(SD=12.6)、男性45%、肺がん31%、胃腸系のがん23%、泌尿生殖器系のがん17%、乳がん14%等であった。本研究参加から死亡までの生存期間の中央値は71日であった。114名(54%)の患者が尊厳の喪失はないと回答し、各々64名(30%)、19名(9%)は尊厳の喪失はわずか、軽度であると回答した。11名(5%)の患者は、尊厳の喪失が中等度存在すると回答し、5名(2%)は高度であると回答した。多変量解析の結果、中等度以上の尊厳の喪失に関連していた要因は、他者への依存、入浴に際しての援助の必要性、痛み、ケアを入院で受けていることであった。
【考察】
  終末期がん患者において、尊厳は比較的よく保たれていることが示唆された。尊厳の喪失には、終末期においてしばしば認められる幾つかの種類の苦痛と密接に関連することが示された。

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