Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.19
May 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第19号

Current Insight
全ての医療従事者に必要なターミナルケアの姿勢
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻  武 ユカリ
 ターミナルケアとは、「治癒の見込みのない終末期(死亡前6ヶ月〜3ヶ月を指す)の患者の持つ苦痛を、人間的な苦しみや悲しみとして理解し、その苦痛の緩和を図り、最後まで人生を全うできるようにケアすることをいう。」と定義されている。(生命倫理学辞典:太陽出版2003年)この定義の中の『患者の持つ苦痛を、人間的な苦しみや悲しみとして理解し、その苦痛の緩和を図る』というケアは、終末期の患者だけに限らず、全ての患者に提供されるべきだと思うのである。通常、終末期のケアについて議論されるとき、対象となるのは悪性腫瘍疾患の患者であり、ホスピス、緩和ケア病棟、在宅ホスピス等が想定されている場合が多い。しかし、終末期の患者は悪性腫瘍疾患ばかりでなく、肺炎、肝炎、腎不全、心不全、脳血管疾患など、非腫瘍性疾患の患者も多くいる。確かに、余命の期限が腫瘍性疾患ほど明確ではないため、終末期のケアの対象と考えにくいかもしれない。しかし、余命の期限が不明な患者に対しても、その人の苦痛を人間的な苦しみや悲しみとして理解し、苦痛の緩和を図るケアが必要なことは言うまでもない。
 そして現実的に、終末期を迎えた患者の医療、看護は、ホスピスや緩和ケア病棟、在宅ホスピスなど専門的な施設や機関以外でも行われている。緩和ケア病棟、ホスピス病棟の数も増えてはいるが、一般病院で亡くなる患者の方が圧倒的に多い。一般病院でも在宅でも、医療の専門職として患者を看取った経験は、多くの医療者にあるだろう。このようにケアを提供している場所に関係なく、終末期の患者に対するケアは行われており、特定の施設で、特定の患者に提供されるケアではない。以上のことにより、終末期のケアは、全ての患者に対する医療、看護の基本であり、全ての医療従事者は終末期のケアについて学ばなければならない。

Close