Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.19
May 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第19号

Current Insight
STAS日本語版とクリニカル・オーディット
京大学成人看護学/ターミナルケア看護学  宮下 光令
 STAS(Support Team Assessment Schedule)とは英国のDr.Higginsonにより、緩和ケアのクリニカル・オーディットのために開発されたツールである。このたび日本語への翻訳およびValidation作業を終えたのでここに紹介する。
 オーディットは「監査」と訳されることが多い。系統的な(自己)評価活動であり、組織全体の成果達成評価、遺族調査、Peer Review、記録の適切性の評価なども含まれる(より詳しくはHigginson 1993参照)。STASはそのための1ツールであり、「痛みのコントロール」、「症状が患者に及ぼす影響」、「患者の不安」、「家族の不安」、「患者の病状認識」、「家族の病状認識」、「患者と家族のコミュニケーション」、「職種間のコミュニケーション」、「患者・家族に対する医療スタッフのコミュニケーション」の9項目からなる。医療者による評価なので、緩和ケアのセッティングでの利用に比較的適している。基本的に項目ごとに扱い、臨床研究での評価尺度として利用することもできる(すでにSTAS日本語版の一部項目を用いた臨床研究が進行している)。
 STAS日本語版はSTAS Working Group Japan(責任者:的場和子)によって翻訳され、厚生科学研究費の補助を得てValidationが行われた(志真 2002)。現在、英文投稿準備中である。現時点での最新バージョンと解説が雑誌「ターミナルケア」に掲載予定である(宮下 2003)。さらに、これらの研究を元にした小冊子(STAS日本語版マニュアル:仮題)を作成中で、項目の詳細な説明、Q & A、信頼性研究に使用した仮想症例、STAS日本語版使用にあたって必要な手続きなどが記載される予定である。
 STASはまだ日本語版の作成がされたばかりであり、実際の適用には十分な準備や工夫が必要かもしれない。オーディットとは1.ケア基準を作成する、2.臨床の実践活動を評価し基準と比較する、3. 結果を臨床のケアにフィードバックし、新しい基準の作成や修正を行う、というサイクルからなる。このような(自己)評価活動とそれに基づく改善は、わが国の緩和ケアの質保証のために重要な役割を果たすと考えられ、今後の発展が望まれる領域であると考えられる。

【 参考文献 】
Higginson IJ(ed). Clinical Audit in Palliative Care. Oxford: Radcliffe Medical Press, 1993.
志真泰夫, 他. 厚生科学研究費補助金 医療技術評価総合研究事業 「緩和医療提供体制の拡充に関する研究」平成13年度総括・分担研究報告書(主任研究者 志真泰夫), 2002年4月.
宮下光令, 笹原朋代, 他. 自己評価の実際―クリニカル・オーディットとSTAS―. ターミナルケア 2003; 13: 109-114.

Close