Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.18
Feb 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第18号

Journal Club
「二重結果の原理」に基づく「終末期の鎮静」の限定的容認論
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 医療倫理学分野  水野 俊誠
Jansen LA, Sulmasy DP : Sedation, alimentation, hydration, and equivocation : careful conversation about care at the end of life. Ann Intern Med 136 : 845-849,2002

 「終末期の鎮静」と安楽死の関係をめぐる問題は、近年、多大な関心を喚起している。この問題に関する議論のなかで、安楽死を否認しながら「終末期の鎮静」を容認するための方策として、「二重結果の原理」なるものが用いられることがある。この原理によれば、良い結果と悪い結果の両方を招く行為が容認されるのは、行為者が悪い結果を直接目指しておらず、悪い結果が良い結果のための手段ではなく、その行為を遂行する相応な理由がある場合であるとされる。この原理に対しては賛否両論があるが、Jansenらはそれを支持する立場から、「終末期の鎮静」の限定的容認論を提示している。
 彼らは、「終末期の鎮静」を「死期切迫時の鎮静」と「死を目指した鎮静」に分ける。「死期切迫時の鎮静」が満たすべき条件は、(1)患者の死期が切迫している、(2)標準的な緩和ケアを施しても緩和できない症状がある、(3)当該の症状に対して有効と分かっている治療を施す、(4)その治療は鎮静という予見された意図せざる副作用をもたらす、(5)生命維持治療が無効で患者の負担になる場合には控えられるというものである。一方、「死を目指した鎮静」が満たすべき条件とは、(1)患者の死期は切迫している必要はない、(2)治療抵抗性の症状の実体は精神的苦痛である、(3)症状緩和のための手段として患者の意識を消失させる、(4)患者の死期を早めるために生命維持治療を中止するというものである。多くの医師は、「死期切迫時の鎮静」を容認するが「死を目指した鎮静」は容認しないとJansenらは言う。そして、この違いを説明するために、彼らは「二重結果の原理」を援用する。この原理を適用すれば、「死期切迫時の鎮静」は容認されるのに対して「死を目指した鎮静」は容認されない、と彼らは考える。
 また、Jansenらは、死にゆく患者の自発的意思による「人工輸液および栄養の拒否」を容認するが、医師が患者に「自発的な絶飲食」を勧めることは容認しない。「自発的な絶飲食」を患者に勧めることは自殺の手助けをすることであり、「悪事に協力するのは不正である」という「協働の原理」に基づいて容認されない、と彼らは述べている。

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