Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.18
Feb 2003

日本緩和医療学会 ニューズレター第18号

Current Insight
高齢者の緩和ケアに思うこと
戸田中央総合病院緩和治療科  中神百合子
 高齢者増加に伴い、65歳以上の死因第一位は癌である。筆者は一般病院で、進行・末期癌患者を対象にした緩和ケアに従事しているが、この一般的傾向を受けて、昨年1年間の入院患者約200名の半数が65歳以上、その44%が75歳以上の後期高齢者であった。年齢を問わず、適応と本人の了解があれば化学療法など可能な治療を行う。当初の予測より意味ある延命をしている場合があり、高齢を理由に医療の選択肢を狭めてはならないとつくづく思う。一方、best supportive careしかないと医療者が判断しても、未告知のままで徹底した延命治療を望む家族もいる。本人の意志や自己決定権を尊重した医療を提供したいが、なかなか難しい。
 ところで、1989年、第一回高齢者の緩和ケア国際学会で、B.マウント博士は、高齢者の緩和ケアと老年医学のケアの類似点を挙げ、両者の結びつきが必要であることを述べた。しかし、カナダ、アメリカの高齢者緩和ケアはend-of-lifeケアに位置づけられ、エイジズムでケアが制限されているような印象を受ける。果たして高齢者と非高齢者で要求される緩和ケアは違うのだろうか?違いがあるとしたらどんな点か、十分な研究が進んでないように思う。たとえば痛みについて、75歳以上の患者では鎮痛剤の必要量は少なくてすむと言われている。しかし、「痛みは我慢するもの」と考えて医療者に痛みを訴えようとしない高齢者がいるのも事実である。老いや死はいのちの当然の流れで、それに逆らった延命医療も問題だが、エイジズム横行の医療も問題である。緩和ケアの基本は、ありのままのその人を受け入れるところにある。高齢者に対しても、自己決定権と個別性を尊重した緩和ケアの提供が望ましく、それを可能にする研究がすすんで欲しいと願っている。

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