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苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン(2010年版)

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6章 文献的検討の要約
1 医学的検討
6
効果・有害事象
 鎮静の苦痛緩和効果や有害事象を患者・家族の評価に基づく信頼性・妥当性の確認された方法で明らかにした研究はない。
 遺族調査では,鎮静後に,ほとんど・まったく苦痛が緩和された患者は60%,ときに苦痛がある程度にまで緩和された患者が28%であった(Morita 2004d)。医療者による評価では,ミダゾラムで98%,その他の薬剤においても75%以上の苦痛緩和の効果が認められた(Cowan 2001)。
 6つの観察的研究で,鎮静を受けた患者と受けなかった患者との初診から死亡までの期間に差がないことが示されている(表7;Chiu 2001;Fainsinger 1998a;Kohara 2005;Stone 1997b;Sykes 2003;Ventafridda 1990)。複数の生命予後因子を加えたモデルを用いて鎮静薬による影響を比較した研究においても,鎮静薬の使用による死亡までの期間への有意な影響は認められなかった(Morita 2001d)。詳細な観察的研究では,鎮静薬による生命の短縮効果が臨床的に明確に認められたのは114例中2例(1.8%)であった(Sykes 2003)。
 わが国の緩和ケア専門病棟21施設における深い持続的鎮静が行われた終末期がん患者102名に対しての多施設前向き観察的研究によると,鎮静は症例の83%において症状緩和に役立っており,呼吸数は鎮静前後で有意な減少は認められなかったものの(18±9.0回/分と16±9.4回/分,p=0.62),呼吸抑制(呼吸数8回/分以下)や循環抑制(収縮期血圧60mmHg 以下または50%以上の低下)は20%の患者で認められ,致死的な状態に陥ったのは3.9%であったとしている。また,呼吸抑制や循環抑制は,せん妄に対して鎮静が行われ,the Agitation Distress Scale で高い点数にあった患者ほど,有意に高頻度に認められたとしている。鎮静による副作用については,せん妄,呼吸抑制,循環抑制などが報告されているが,頻度は10%以下である(近藤 2002;Morita 1996d, 2003b, 2005a)。一方,ミダゾラムによって鎮静を行った場合,耐性を生じる可能性が示されている(Bottomley 1990;Burke 1991;Morita 2003b)。
 以上から判断して,鎮静は75%以上の患者で有効であり,重篤な合併症や直接作用による生命短縮は少ないと考えられる。
表7 死亡までの日数の比較
  Ventafridda
1990
Stone
1997b
Fainsinger
1998a
Chiu
2001
Sykes
2003
Kohara
2005
対象数 120 115 79 251 237 124
鎮静を受けた患者 25 19 9±5 28±36 11−17 28.9±25.8
鎮静を受けなかった患者 23 19 6±7 25±31 13−16 39.5±43.7
p値 0.57 >0.2 0.09 0.43 0.23 0.1

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