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苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン(2010年版)

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6章 文献的検討の要約
1 医学的検討
5
意思決定過程
 鎮静における意思決定過程に関する研究では,患者の50〜55%,家族の89〜96%が意思決定過程に参加した(Chiu 2001;Morita 1996d, 2004d)。患者が参加できない主要な理由は認知障害であった。
 一般人口,あるいは,患者・家族が鎮静においてどのような意思決定過程を希望するか,代表性のある大規模集団での調査は行われていない。日本の一般人口を対象とした質問紙調査の結果を表6に示す(Morita 2002b)。耐え難い身体的・精神的苦痛に対しては,半数が深い間欠的鎮静を希望した。意識が低下することやコミュニケーションができなくなることについて,85%が明確に知りたいと述べたが,6%は知りたくないと述べた。あらかじめ鎮静について知っておくことについては,「どんな状況でも知りたい」と回答したものが約半数であったが,「受け止められる状況なら知りたい」という回答が40%であった。自分と家族の意思が異なるときは,34%が「家族の意思にかかわらず自分の意思に従ってほしい」と述べたが,60%は家族への何らかの働きかけを希望した。
 鎮静の希望には,「しっかりものを考えられること」,「死に対する準備をしておくこと」,「苦痛がないこと」など,何が望ましい死にとって重要であると考えるかが関係していた(Fainsinger 2003;Morita 2002b)。
 以上から,鎮静の意思決定においては,約半数の患者では主に認知障害のために意思決定に参加できないが,半数の患者,90%以上の家族は意思決定に加わることができると考えられる。また,苦痛が耐え難いときにどのような治療を希望するかには,何が望ましい死にとって重要であると考えるかが関与しているため,患者個々によって希望は異なると考えられる。一般的には,苦痛緩和とともにコミュニケーションができる手段を望み,鎮静についての明確な説明を希望する場合が多い。一方,あらかじめ説明を受けることについては,受け止められる状況になってから聞きたいと考えるものも多い。患者の意思が家族と異なるときには,家族の意見を調整したうえで自分の意思が優先される方法を求めていると考えられる。
表6 鎮静に関する希望
      「最も希望する」  
耐え難い身体的苦痛 鎮静なし   2.6%  
軽い鎮静   27%  
深い間欠的鎮静   53%  
深い持続的鎮静   4.6%  
安楽死   11%  
耐え難い精神的苦痛 鎮静なし   12%  
軽い鎮静   22%  
深い間欠的鎮静   43%  
深い持続的鎮静   7.2%  
安楽死   14%  
意思決定への参加   意識が低下すること コミュニケーションができなくなること
明確に知りたい 85% 86%
遠まわしに知りたい 7.9% 7.9%
知りたくない 6.6% 6.3%
あらかじめの説明について どんな状況でも知りたい 52%  
受け止められる状況なら知りたい 40%  
知りたくない 7.2%  
家族が反対しているとき 家族を説得してほしい 37%  
家族にかかわらず患者の意思に従ってほしい 34%  
妥協点を見つけるよう調整してほしい 25%  
家族の言うとおりにしてほしい 3.9%  

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