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苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン(2010年版)

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2章 開発過程
1 開発過程
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ガイドライン作成における事前質問紙調査
 本ガイドライン作成にあたり,事前に以下のような調査を2007年度に行い,ガイドライン草案作成の参考にした。
1. 調査目的と方法
 本ガイドライン作成にあたり,使用者の立場からの意見を集積するため,全国の緩和ケアチーム担当者に対して,郵送法による質問紙調査を行った。また,今後のガイドラインのあり方についても意見を収集した。日本緩和医療学会に登録している緩和ケアチーム245施設の担当者(医師・看護師など問わず)に対して,郵送法による質問紙調査を行った。
2. 調査結果
 245施設に質問紙を送付したところ,127施設より回答を得た。回答率は51.8%であった。
1)ガイドラインの利用度と有用性
 ガイドラインの利用度は,「よく利用している」:8.0%,「利用している」:27.2%,「時に利用している」:31.2%,「あまり利用していない」:21.0%,「利用していない」:12.8%であった。一方,有用性については,「とても有用」:20.0%,「有用」:60.0%,「やや有用」:16.8%,「あまり有用ではない」:2.1%,「有用ではない」:0.8%であった。
2)使用者の限定について
 ガイドラインの使用者の拡大としては,「現在のままでよい」:14.5%,「使用者を広げたほうがよい」:85.5%で,後者の内訳としては,「緩和ケアチームのサポートのもとで」:43.5%,「多職種からなる医療チームで」:24.2%,「複数の医師の判断のもとで」:15.3%,「一定の基準(学会のセミナーなどへの出席など)を満たした者」:2.4%であった。
3)各項目への評価
 各項目への評価は以下のとおりであった。
①生命倫理学的基盤の事項
「とても有用」:21.1%,「有用」:62.6%,「やや有用」:12.2%,「あまり有用ではない」:3.3%,「有用ではない」:0.8%であった。
②鎮静を施行する前に検討するべき緩和ケアについて
「とても有用」:22.4%,「有用」:56.8%,「やや有用」:18.4%,「あまり有用ではない」:1.6%,「有用ではない」:0.8%であった。
③鎮静の適応判断について
「とても有用」:20.5%,「有用」:60.7%,「やや有用」:15.6%,「あまり有用ではない」:2.5%,「有用ではない」:0.8%であった。
④鎮静施行に関するフローチャートについて
「とても有用」:21.6%,「有用」:57.6%,「やや有用」:13.6%,「あまり有用ではない」:6.4%,「有用ではない」:0.8%であった。
⑤鎮静についての患者への説明について
「とても有用」:29.5%,「有用」:44.3%,「やや有用」:22.1%,「あまり有用ではない」:3.3%,「有用ではない」:0.8%であった。
⑥鎮静施行における家族へのケアについて
「とても有用」:23.8%,「有用」:50.0%,「やや有用」:17.5%,「あまり有用ではない」:3.2%,「有用ではない」:0.8%であった。
⑦鎮静に用いられる薬剤について
「とても有用」:20.0%,「有用」:67.2%,「やや有用」:8.0%,「あまり有用ではない」:3.2%,「有用ではない」:1.6%であった。
4)ガイドラインの改訂・追加
 ガイドラインの改訂・追加記載に対する要望については,以下のとおりであった。
①間欠的鎮静に関する記載の追加
「盛り込むべき」:89.1%,「盛り込まなくてもよい」:8.8%であった。
②浅い鎮静に関する記載の追加
「盛り込むべき」:94.3%%,「盛り込まなくてもよい」:5.7%であった。
③同意書
「盛り込むべき」:75.0%,「盛り込まなくてもよい」:25.0%であった。同意書掲載についての反対意見には,「同意書は家族に負担を与える」:6施設,「カルテに記載すれば十分である」:3施設が認められた。
④患者・家族向けパンフレット
「盛り込むべき」:90.0%,「盛り込まなくてもよい」:10.0%であった。
⑤鎮静開始後のチェックリスト
「盛り込むべき」:93.3%,「盛り込まなくてもよい」:6.7%であった。
⑥心理実存的な苦痛に対する鎮静
「記載すべき」:86.0%,「記載すべきではない」:14.0%であった。
5)追加すべき鎮静薬について
 追加すべき鎮静薬については,プロポフォール:7施設,デクスメデトミジン:3施設,ハロペリドール:3施設,ケタミン:2施設,セコバルビタール:2施設,ジアゼパム2施設などであった。
3. 調査結果の考察
 ガイドライン全般に対する評価としては,8割近くの施設において有用性を高く評価しているものの,利用度に関しては6割程度の施設にとどまっている。その理由として,院内における緩和ケアに関する知識の普及と緩和ケアチーム体制の不十分さにより,鎮静に関して十分な共通理解が得られていないためと考えられた。一般診療科のスタッフに対して,今後,ガイドラインに関する知識を普及していくことが課題と考えられた。
 2005年版ガイドラインでは使用者を「緩和ケア病棟,あるいは,緩和ケアチームの医療チーム」としているが,使用者の拡大を望む声が8割以上あり,また,緩和ケアチームのサポートのもと,一般診療科においても使用可能とすることを望む意見が多かった。また,一定の基準(研修会の受講など)を設定するのがよいのではないかという意見もみられた。
 各項目への評価は,すべての項目において「有用」以上が7割以上と,おおむね良好であった。
4. 妥当性の検証
1)1回目のデルファイ法(2009年10月)
 本ガイドライン草稿を68セクション(本文62セクション,図・表6セクション)に区切り,それぞれについて妥当性を1(適切でない)から9(適切である)の9件法で評価を求めた。
 その結果,妥当性の中央値7のセクションが1セクション,中央値7.5のセクションが3セクションで,その他の64セクションは中央値8以上であった。また,最大値・最小値の差が8のセクションが2セクション,差が6であるセクションが6セクションで,その他の60セクションは差が5以下であった。各セクションの意見を集約し,内容の再検討を行った。
2)2回目のデルファイ法(2010年1月)
 1回目のデルファイ法後に合意が得られていないと判断された14セクションに関して,妥当性の再評価を求めた。その結果,12セクションで中央値が8以上,かつ,10セクションにおいて,最小と最大の差が5以下であった。各セクションの意見を集約し,小修正を加え,全セクションで合意が得られたものを委員会の暫定稿とした。

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