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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)

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4章 資 料
4 海外他機関による疼痛ガイドラインの抜粋
はじめに
 本ガイドラインでは、がん疼痛に関して、学会またはそれに準じる組織が作成・承認している英文のガイドラインをガイドラインプールとした(P255,ガイドラインプール・リストの項参照)。
 そのなかから、作成プロセスの方法論が述べられており、臨床的に有意義と思われる6編を選択し、それらの記載のうち薬物療法に関連する基本的な部分(特に推奨レベルが記載された部分)、臨床的に意義のあると思われる部分(他の専門家に相談するために知っておくべきことなど)を抜粋し適宜補足して、参考となるように以下に要約した。
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NCCNの成人のがん疼痛に対する臨床ガイドライン(2008, Web)
  • National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のパネルメンバーにより作成されたコンセンサスレポートで、推奨カテゴリーはすべて2Aである(推奨カテゴリーは1、2A、2B、3の4段階で、2Aは「臨床経験を含むやや低いレベルのエビデンスに基づき、推奨が適切であるという点でNCCN内のコンセンサスが統一している」とされる)。疼痛重症度による治療アルゴリズム(図1)を示している点、個別的な多様性を認めたうえで具体的な処方量や増量のタイミングなどを例示している点を特徴とする。
1)包括的評価
  • 痛みの重症度を、Numeric Rating Scale(NRS)などを使用して評価する。さらに、痛みの部位、生活への支障、時間因子 (発症時期、発症からの経過、持続痛か突出痛か)、性状(電気が走るようなど)、増悪因子と軽快因子、併存症状、現在の疼痛治療とその効果などを評価する。
2)NSAIDsとアセトアミノフェン
  • 患者が効果を実感する薬剤のいずれかを使用する。一般には、イブプロフェン400mg/日(最大3,200mg/日)、または、アセトアミノフェン650mgを4時間ごとまたは1,000mgを6時間ごと(最大4,000mg/日)を使用する。選択的COX-2 阻害剤は、血小板機能に影響がなく、消化管の影響も少ないが、腎機能障害を軽減することは示されていない。
3)オピオイド
  • 非オピオイド鎮痛薬を上限量使用時、またはNRS ≧ 4 の時、オピオイドを開始する。突出痛(体動時痛を含む)、定時服用前の疼痛増悪の時などに、経口レスキュー・ドーズとして1日量の10〜20%量の速放性製剤を必要時1時間以上あけて服用し、直近24時間の使用量をもとに至適量を決定して増量する。増量の速さは重症度により異なる(図1)。
  • オピオイドローテーションの際、疼痛コントロールが良好だった場合は交差耐性が不完全である可能性を考慮して計算上等力価の換算量より25〜50%減量し、コントロール不良だった場合は25%増量、または同等量で開始する。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは推奨されない。
  • フェンタニル貼付剤の使用は、鎮痛効果が不安定な場合は推奨されない。増量は直近72時間のレスキュー・ドーズ使用量をもとに決定する。ローテーションの際は、個人差が大きいので適宜調整が必要である。
図1 疼痛重症度とオピオイド使用の有無による治療アルゴリズム 
図1 疼痛重症度とオピオイド使用の有無による治療アルゴリズム
〔NCCNガイドラインより改変〕
4)オピオイド
  • オピオイドの副作用のうち便秘以外は一般に耐性が生じるが、副作用が継続し難治性の場合は、他の原因を除外したうえでオピオイドローテーションを検討する。
  • 便秘:
    センナなどの大腸刺激薬を使用し、飲水・食物繊維の摂取や運動を促して便秘を予防する。他にマグネシウム剤、ビサコジル剤、ラクツロース、メトクロプラミドなどで治療する。
  • 気:
    オピオイド処方時には制吐薬(プロクロルペラジン、ハロペリドール、メトクロプラミドなど)を頓用処方し、いつでも使用できるようにする。
  • せん妄:
    ハロペリドール(0.5〜2mgを4〜6時間ごとに経口)またはその他の抗精神病薬で治療する。
  • 呼吸抑制:
    意識障害が生じる場合、ナロキソン(生食で希釈し、0.04〜0.08mgを30〜60秒ごとに、症状が改善するまで繰り返す)で対応する。オピオイドの半減期はナロキソンの半減期より長いので注意する。10分以内に1mg使用しても意識が戻らない場合は別の原因を考える。
  • 眠気・鎮静: カフェインの併用、オピオイドの減量、頻回分割投与などを試みる。
5)神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬
  • 神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬としては、抗うつ薬と抗けいれん薬が第一選択である。モルヒネの効果が不十分な時に鎮痛補助薬の併用は有効であるが、がん患者のデータはまだ不十分であり、神経障害性疼痛の種類や個人により効果の差が大きい。薬剤の選択は、副作用のプロフィールと併存疾患・全身状態による。
  • 抗うつ薬:
    一般にうつ病の治療の場合より比較的少量で効果があり効果出現も早い。オピオイドとの併用で、三環系抗うつ薬を低用量で開始し、抗コリン作用による副作用に注意しながら3〜5日ごとに増量する(例えばノルトリプチリン10〜25mgを就寝前で開始し、50〜150mgまで増量する)。
  • 抗けいれん薬:
    オピオイドと併用で、ガバペンチン100〜300mg就寝前で開始し、3日ごとに900〜3,600mg(分2〜3)まで増量するが、高齢者・腎不全症例では注意が必要である。
  • コルチコステロイド:緊急性の高い激痛や骨・神経叢が障害されたことによる激痛の場合に有用とされる。
6)病態による薬剤の選択
  • 炎症に伴う痛みにはNSAIDsまたはコルチコステロイド、骨転移痛にはNSAIDs・放射線治療・神経ブロック・ビスホスホネート・感受性がある場合には内分泌療法や化学療法・コルチコステロイドなど、神経圧迫にはコルチコステロイド、神経障害性疼痛には抗うつ薬・抗けいれん薬を使用する。
7)薬物療法以外の対応
  • 理学療法的なサポート(理学療法、日常生活動作のサポート、マッサージ、温寒刺激、鍼灸など)、精神的なサポート(イメージ療法、リラクセーション、認知行動療法、スピリチュアルケアなど)を行う。
  • 神経ブロックで鎮痛効果の可能性がある場合(膵臓がん、上部消化器がんの腹腔神経叢ブロックや、肋間神経ブロックなど)や、オピオイド治療で鎮痛効果を得るのが困難な場合、インターベンション治療を相談する。

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