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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)

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4章 資 料
1 作成過程
1
作成過程
 本ガイドラインは、日本緩和医療学会の「緩和医療ガイドライン作成委員会 がん疼痛ガイドライン作業部会」(以下、委員会)が、2001年に発行された「診療ガイドラインの作成の手順」(福井次矢・丹後俊郎)に準じて作成した。エビデンスのレベルと推奨の強さに関しては、緩和ケアの性質やガイドラインの研究に関する現状を考慮し、後述のように定めた。
 作成後、AGREE評価法(2001)による評価を行った。
1.
 日本緩和医療学会において委員会を組織し、ガイドラインの作成のための手順を作成にした。次に、各委員から臨床疑問案を収集し、委員会において臨床疑問を作成した。続いて、委員が分担して、系統的文献検索を行い該当文献を収集し、基準を満たす論文を抽出し、臨床疑問に対する原案を作成した。原案は、デルファイ法に従って合意が得られるまで修正した。さらに、外部委員の評価を得た後に、再びデルファイ法を行い最終版を作成した。
2. 臨床疑問の設定
 収集した臨床疑問案をPECO形式(P:患者、E:暴露、C:比較、O:結果)に定式化した。定式化された臨床疑問を解決できる臨床研究が存在しなかった場合には、より包括的な臨床疑問を作成した。合計65の臨床疑問をおいた。
3. 系統的文献検索
 臨床疑問ごとに行った。文献のソースは、①PUBMEDを用いた系統的文献検索(詳細はP227,Ⅳ-2 文献の検索式の項参照)とそのrelated articles、②2000年1月1日〜2008年7月31日までのJournal of Pain and Symptom Management およびPalliative Medicineのhand search、③Cochrane databaseのPaPaS category(Cochrane Pain, Palliative and Supportive Care)の該当項目、④委員会で参考資料として選択したガイドラインと教科書に引用されている文献、および作成委員のデータベースとそれらの引用文献とした。これらから、担当者が適格基準(表1)に満たすものをすべて選択した。製薬会社などからの資金提供を受けている文献はわかるように同定した。原則として、基準に該当しない研究は参考文献とした。文献検索の対象とした期間については、各項目ごとに設定した(P227,Ⅳ-2 文献の検索式参照)。
表 文献の適格基準
  • 成人を対象としている
  • 日本語または英語で記載されている
  • 主な対象患者はがん患者である
  • 国内で利用できる方法・薬物である
  • 系統的レビュー、メタアナリシス、無作為化比較試験、または前向きの観察的研究・前後比較研究である
  • 抗がん治療(外科治療、化学療法、放射線治療)の効果としての痛みをみているもの、および、処置に伴う痛みをみているものは除外する。
※ 該当論文がほとんどない神経障害性疼痛やせん妄などの項目については非がん患者を対象とした研究も含めて検討したが、対象患者はがん患者であるか、非がん患者であるかを区別して記述した。
4. ガイドラインと教科書
 参考資料として、既存のガイドラインと教科書として、以下のものを選択した。
1)ガイドライン
  • EAPC(European Association for Palliative Care)ガイドライン(本ガイドラインでは「EAPCガイドライン(2001a)」と表記する。以下、同様)
    Hanks GW, de Conno F, Cherny N, et al. Morphine and alternative opioids in cancer pain: the EAPC recommendations. Br J Cancer 2001; 84: 587-93
  • EAPCガイドライン〔EAPCガイドライン(2002b)〕
    Mercadante S, Radbruch L, Caraceni A, et al. Episodic(breakthrough)pain. Cancer 2002; 94: 832-9
  • EAPCガイドライン〔EAPCガイドライン(2001b)〕
    Cherny N, Ripamonti C, Pereira J, et al. Strategies to manage the adverse effects of oral morphine: An evidence-based report. J Clin Oncol 2001; 19: 2542-54
  • NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドライン〔NCCNガイドライン〕
    National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, Adult cancer pain. http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/PDF/pain.pdf
  • ESMO(European Society for Medical Oncology)ガイドライン〔ESMOガイドライン(2007)〕
    ESMO Guidelines Working Group, Jost L. Management of cancer pain: ESMO clinical recommendations. Ann Oncol 2007; 18(2 Suppl): ii92-4
  • ACCP(American College of Chest Physicians)ガイドライン〔ACCPガイドライン(2007)〕
    Kvale Pa, Selecky PA, Prakash UB; American College of Chest Physicians. Palliative care in lung cancer: ACCP evidence-based clinical practice guidelines (2nd edition). Chest 2007; 132(3 Suppl): S368-403
2)教科書
  • Loeser JD. eds; Butler SH, Chapman CR, Turk DC. associate eds. Bonica's Management of Pain, 3rd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2001
  • Berger AM, Shuster JL, Von Roenn JH eds. Principles and Practice of Palliative Care and Supportive Oncology, 3rd ed, Lippincott Williams & Wilkins, a Wolters Kluwer business, 2007
  • Doyle D, Hanks GWC, Cherny NI, Calman K eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine, 3rd ed, Oxford University Press, 2005
  • McMahon SB, Koltzenburg M eds. Wall and Melzack's Textbook of Pain, 5th ed, Elsevier Churchill Livingstone, 2006
  • Walsh D. eds. Palliative Medicine, Saunders Elsevier, 2009
  • Bruera E, Higginson IJ, Ripamonti C, von Gunten C eds. Textbook of Palliative Medicine, Hodder Arnold, 2006
5. 妥当性の検証
(1)デルファイ法前の検討
 背景知識、推奨全体にわたるガイドライン全体を130項目に分け、それぞれについて、わかりやすさ、妥当性を3件法で評価を求めた。項目ごとに回答の分布を各委員に公開し、16時間の会議によって相違点を議論した。
(2)1回目のデルファイ法
 「背景」、「推奨」の185項目それぞれについて妥当性を1(適切でない)から9(適切である)の9件法で評価を求めた。その結果、中央値8以上の項目が162項目(最小と最大の差が6以上:96項目)、中央値が7以上8未満の項目が14項目であり、中央値が7未満の項目が9項目であった。項目ごとに中央値、最小値、最大値を各委員に公開し、会議によって相違点を議論した。議論の議事録を委員に配布し、原稿の修正を行った。
(3)2回目のデルファイ法
 「背景」、「推奨」の184項目それぞれについて妥当性を1(適切でない)から9(適切である)の9件法で評価を求めた。その結果、中央値8以上の項目が177項目(最小と最大の差が6以上:43項目)、中央値が7以上8未満の項目が5項目であり、中央値が7未満の項目が2項目であった。1回目のデルファイ法に比較してコンセンサスが得られていると考えられ、全体として大きな意見の相違を認めないと考えられた。項目ごとに中央値、最小値、最大値を各委員に公開し、会議によって相違点を議論した。相違点の修正を含めて、全体の統一をとるために、 3名からなるタスクフォース(山本 亮、新城拓也、森田達也)により「推奨」を内容を変更しない形で一貫して加筆修正した。修正した原稿を委員会の暫定稿とした。
(4)3回目のデルファイ法と評価委員による評価
 委員会の暫定稿に対して、評価委員(本ガイドラインの作成に関与していなかった医師と看護師)12名に評価を求めた。あわせて、再び、「背景」、「推奨」の180項目それぞれについて妥当性を1(適切でない)から9(適切である)の9件法で評価を求めた。その結果、中央値8以上の項目が178項目(そのうち最小と最大の差が6:14 項目;7:1項目)、中央値が7以上8未満の項目が2項目であった。中央値が8未満の2つの項目については本文から削除した。以上の結果、大きな意見の相違を認めず、一致がみられたと考えられた。
(5)委員会による修正
 評価委員の評価とデルファイ法の結果をもとに、作成委員による2日間の会議を行い、修正を加えたものを委員会で承認した。最終原稿を、作成委員6名(志真泰夫、新城拓也、細矢美紀、的場元弘、森田達也、山本 亮)で小修正を加え、的場元弘が集約した。
(6)背景の関連学会の記載
 背景知識のうち、薬物療法以外の疼痛治療法に関しては、「放射線治療」、「経皮的椎体形成術(骨セメント)」を、それぞれ、日本放射線腫瘍学会、日本インターベンショナルラジオロジー学会に依頼した。
(7)AGREE ガイドラインによる評価
 最終原稿について、小山 弘、四方 哲により、AGREE ガイドライン(2001)による評価を行った〔AGREE 共同計画ガイドラインの研究・評価用チェックリストAppraisal of Guidelines for Research & Evaluation(AGREE) instrument、2001年9月、http://www.mnc. toho-u.ac.jp/mmc/guideline/AGREE-final.pdf〕。
 AGREEに基づきガイドラインを評価したところ、作成過程は厳密であると考えられ、編集の独立性も十分であると考えられた。一方、適用可能性(applicability)についての記載は不十分であり、特に次回改訂時には、ガイドライン遵守をモニタリングする方法に関する提案がなされることが望まれると評価された。
6. 緩和医療学会の承認
 日本緩和医療学会において承認した。
7. ガイドライン作成者
[緩和医療ガイドライン作成委員会]
【委員長】
  志真 泰夫 筑波メディカルセンター病院緩和医療科
【担当委員】
  細矢 美紀 国立がん研究センター中央病院看護部
  的場 元弘 国立がん研究センター中央病院緩和医療科・精神腫瘍科
  森田 達也 聖隷三方原病院緩和支持治療科

[がん疼痛ガイドライン作業部会]
【部会長】
  志真 泰夫 筑波メディカルセンター病院緩和医療科
【副部会長】
  細矢 美紀 国立がん研究センター中央病院看護部
  的場 元弘 国立がん研究センター中央病院緩和医療科・精神腫瘍科
  森田 達也 聖隷三方原病院緩和支持治療科
員】
  赤木  徹 国立がん研究センター中央病院薬剤部
  荒井 保明 国立がん研究センター中央病院放射線診断科、日本インターベンショナルラジオロジー学会〔外部委員〕
  新幡 智子 慶應義塾大学看護医療学部
  有賀 悦子 帝京大学医学部内科学講座緩和医療科、帝京がんセンター/ 医療情報システム研究センター
  池永 昌之 淀川キリスト教病院ホスピス
  井沢 知子 京都大学医学部附属病院看護部
  伊勢 雄也 日本医科大学付属病院薬剤部
  井関 雅子 順天堂大学医学部麻酔科・ペインクリニック
  伊東 俊雅 東京女子医科大学病院薬剤部
  射場 典子 NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパン
  今井 堅吾 淀川キリスト教病院ホスピス
  上園 保仁 国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究部
  上田 敬子 恵佑会札幌病院緩和ケア科
  梅田  恵 株式会社緩和ケアパートナーズ
  大坂  巌 静岡県立静岡がんセンター緩和医療科
  大澤 匡弘 星薬科大学薬物治療学教室
  大畑 美里 聖路加国際病院看護部
  小笠原利枝 横浜市立みなと赤十字病院看護部
  岡本 禎晃 大阪大学大学院薬学研究科実践薬学教育研究センター病院薬学教育研究部
  奥津 輝男 静岡県立静岡がんセンター緩和医療科
  奥出有香子 順天堂大学医学部附属順天堂医院看護部
  加賀谷 肇 済生会横浜市南部病院薬剤部
  風間 郁子 国際医療福祉大学三田病院看護部
  片山 志郎 日本医科大学付属病院薬剤部
  加藤  恵 武蔵野赤十字病院看護部
  川地香奈子 癌研究会有明病院看護部
  川村三希子 北海道医療大学看護福祉学部
  木下 寛也 国立がん研究センター東病院緩和医療科・精神腫瘍科
  葛巻 直子 星薬科大学薬品毒性学教室
  工藤 尚子 国立がん研究センター研究所
  国分 秀也 北里大学病院薬剤部
  小島 圭子 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科
  小原 弘之 県立広島病院緩和ケア科
  小宮 幸子 横浜市立大学附属病院薬剤部
  小山  弘 国立病院機構京都医療センター教育研修部長〔外部委員〕
  小山富美子 近畿大学医学部附属病院がんセンター看護部
  境  徹也 長崎大学医学部麻酔学教室
  坂元 敦子 杏林大学医学部付属病院看護部
  坂本 雅樹 名古屋市立大学病院緩和ケア部
  佐々木聡美 みどり内科クリニック
  佐野 元彦 埼玉医科大学総合医療センター薬剤部
  塩川  満 聖路加国際病院薬剤部
  四方  哲 蘇生会総合病院外科〔外部委員〕
  宍戸 英樹 宍戸内科医院
  篠  道弘 静岡県立静岡がんセンター薬剤部
  篠原 明子 帝京大学医学部附属病院緩和医療科
  清水わか子 君津中央病院放射線治療科、日本放射線腫瘍学会
  白髭  豊 白髭内科医院
  新貝夫弥子 愛知県がんセンター中央病院看護部
  新城 拓也 社会保険神戸中央病院緩和ケア病棟
  須賀 昭彦 静岡済生会総合病院緩和医療科
  鈴木  勉 星薬科大学薬品毒性学教室
  瀬 久光 福岡大学病院薬剤部
  高田 慎也 国立病院機構北海道がんセンター薬剤科
  高田 正史 長崎大学病院麻酔科
  瀧川千鶴子 KKR 札幌医療センター緩和ケア科
  田口 賀子 大阪府立成人病センター看護部
  田中 桂子 がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科
  長  美鈴 聖路加国際病院緩和ケア科
  敦賀 健吉 北海道大学医学研究科麻酔・周術期医学分野
  冨安 志郎 長崎市立市民病院麻酔科・緩和ケアチーム
  中川 貴之 京都大学薬学研究科生体機能解析学分野
  中西 真理 在宅看護研究センターLLP日本在宅看護システム
  成田  年 星薬科大学薬品毒性学教室
  西岡 弘晶 名古屋記念病院総合内科
  能勢 誠一 長崎大学病院薬剤部
  浜野  淳 大和クリニック
  林  章敏 聖路加国際病院緩和ケア科
  林 ゑり子 藤沢湘南台病院看護部
  久永 貴之 筑波メディカルセンター病院緩和医療科
  久原  幸 手稲渓仁会病院がん治療管理センター緩和ケア室・緩和ケアチーム
  尾藤 誠司 NHO東京医療センター教育研修部/臨床疫学研究室
  廣岡 佳代 聖路加看護大学看護実践開発研究センター
  府川美沙子 北里大学病院薬剤部
  北條美能留 長崎大学病院麻酔科・緩和ケアチーム
  細川 豊史 京都府立医科大学麻酔科
  細谷  治 城西大学薬学部薬剤学講座
  本田 晶子 聖路加看護大学看護実践開発研究センター
  前堀 直美 株式会社レーベンプラン レモン薬局三方原店
  松坂  俊 手稲渓仁会病院総合内科/感染症科・緩和ケアチーム
  松田 陽一 大阪大学大学院医学系研究科麻酔・集中治療医学講座
  松本 直子 聖路加看護大学図書館
  松本 禎久 国立がん研究センター東病院緩和医療科・精神腫瘍科
  三浦 里織 慶應義塾大学病院看護部
  村上 敏史 国立がん研究センター中央病院緩和医療科・精神腫瘍科
  村田 寛明 長崎大学医学部麻酔学教室
  森脇 俊和 筑波大学大学院消化器内科〔外部委員〕
  八戸 すず 順天堂大学がん治療センター緩和ケアチーム
  山口 敬介 順天堂大学医学部麻酔科ペインクリニック講座
  山口  崇 筑波メディカルセンター病院緩和医療科
  山本  亮 佐久総合病院総合診療科・緩和ケアチーム
  温泉川真由 国立がん研究センター研究所腫瘍ゲノム解析・情報研究部
  余宮きのみ 埼玉県立がんセンター緩和ケア科
  龍  恵美 長崎大学病院薬剤部・緩和ケアチーム
  渡邊 紘章 静岡県立静岡がんセンター緩和医療科
  渡邉 眞理 神奈川県立がんセンター地域医療連携室
【評価委員】
  飯野 京子 国立看護大学校成人看護学
  加藤 裕久 昭和大学薬学部医薬品情報学教室〔外部委員〕
  川越 正平 あおぞら診療所
  木澤 義之 筑波大学大学院人間総合科学研究科
  下山 直人 国立がん研究センター東病院緩和医療科・精神腫瘍科
  茶谷 正史 大阪労災病院放射線科〔外部委員〕
  恒藤  暁 大阪大学大学院医学系研究科緩和医療学
  中島 康雄 聖マリアンナ医科大学放射線医学教室〔外部委員〕
  中山 健夫 京都大学健康情報学〔外部委員〕
  奈良林 至 埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター緩和医療科
  向山 雄人 癌研有明病院緩和ケア科
  村川 和重 兵庫医科大学疼痛制御科学・ペインクリニック部

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