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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)

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2章 背景知識
4 薬理学的知識
3
鎮痛補助薬
2
鎮痛補助薬の概要
 神経障害性疼痛をはじめとするオピオイド抵抗性の痛みに対して、現在、多くの薬剤が鎮痛補助薬として使用されているが、質の高い臨床試験は少なく、適正な使用方法についてはいまだに確立されていない。帯状疱疹後神経痛、糖尿病末梢神経障害は、対象の痛みの性質が比較的均一と考えられ、これらの非がん性神経障害性疼痛の試験成績をもとに、がんによる神経障害性疼痛に使用されることが多い。痛みの機序に基づき治療法を選択し、NNT1(number needed to treat)が小さく、NNH2(number needed to harm)が大きな薬物を選択することが、神経障害性疼痛に対する効果的かつ安全な治療戦略となるが、前述のとおり、十分な臨床試験に基づくデータが少ないうえに、本邦で使用できる薬剤は限られる。また現状においては、そのほとんどが保険適用外の使用となる。
 これらを踏まえたうえで、参考として、表11に鎮痛補助薬の投与方法の目安、表12に神経障害性疼痛と骨転移痛に対するNNTおよびNNHを記載した。
1:NNT(number needed to treat)
1例の効果を得るためにその治療を何人の患者に用いなければならないかを示す指標。
2:NNH(number needed to harm)
何人の患者を治療すると1例の有害症例が出現するかを示す指標。
表11 鎮痛補助薬の投与方法の目安(参考) 
用法・用量 備考(主な副作用)
抗うつ薬 アミトリプチリン
アモキサピン
ノルトリプチリン
開始量:10mg/日 PO
(就寝前)
維持量:10〜75mg/日 PO
 1〜3日ごとに副作用がなければ
 20mg→30mg→ 50mgと増量
眠気、口内乾燥、便秘、排尿障害、霧視など
パロキセチン 開始量:20mg(高齢者は10mg)/日 PO 嘔気(開始初期に多い)、食欲不振、頭痛、不眠、不安、興奮など
フルボキサミン 開始量:25mg/日 PO
抗けいれん薬 カルバマゼピン 開始量:200mg/日 PO
    (就寝前)
維持量:200〜1,200mg/日 PO
 1〜3日ごとに眠気のない範囲で、
 300mg 就寝前→400mg夕・就寝前
 → 600mg夕・就寝前と増量
ふらつき、眠気、めまい、骨髄抑制など
バルプロ酸 開始量:200mg/日 PO
    (就寝前)
維持量:400〜1,200mg/日 PO 眠気、嘔気、肝機能障害、高アンモニア血症など
フェニトイン 維持量:150〜300mg/ 日 PO(分3) 眠気、運動失調、嘔気、肝機能障害、皮膚症状など
ガバペンチン 開始量:200mg/日 PO
    (就寝前)
維持量:600〜2,400mg/日  PO
 1〜3日ごとに眠気のない範囲で、
 400mg分2→600mg分2…と増量
眠気、ふらつき、めまい、末梢性浮腫など
クロナゼパム 開始量:0.5mg/日 PO
    (就寝前)
維持量:1〜2mg/日 PO
 1〜3日ごとに眠気のない範囲で、
 1mg就寝前→1.5mg就寝前まで増量
ふらつき、眠気、めまい、運動失調など
抗不整脈薬 メキシレチン 開始量:300mg/日 PO
(分3)
維持量:150〜450mg/日 PO(分3) 嘔気、食欲不振、腹痛、胃腸障害など
  リドカイン 開始量:5mg/kg/日 
CIV、CSC
維持量:5〜20mg/kg/日 CIV、CSC
 1〜3日ごとに副作用のない範囲で、
 10→15→20mg/kg/日まで増量
不整脈、耳鳴、興奮、けいれん、無感覚など
NMDA 受容体
拮抗薬
ケタミン 開始量:0.5〜1mg/kg/日
CIV、CSC
維持量:100〜500mg/日 CIV、CSC
 1日ごとに精神症状を観察しながら
 0.5〜1mg/kgずつ増量
眠気、ふらつき、めまい、悪夢、嘔気、せん妄、けいれん(脳圧亢進)など
中枢性筋弛緩薬 バクロフェン 開始量:10〜15mg/日
PO(分2〜3)
維持量:15〜30mg/日 PO(分2〜3) 眠気、頭痛、倦怠感、意識障害など
コルチコ
ステロイド
ベタメタゾン
デキサメタゾン※
① 漸減法
開始量:4〜8mg/日
(分1〜2:夕方以降の投与を避ける)
維持量:0.5〜4mg/日
② 漸増法
開始量:0.5mg/日
維持量:0.5 〜 4mg/日
高血糖、骨粗しょう症、消化性潰瘍、易感染性など
ベンゾジアゼピ
ン系抗不安薬
ジアゼパム 2〜10mg/回 1日3〜4 回 ふらつき、眠気、運動
失調など
ビスホスホネート パミドロン酸 90mgを4時間かけてDIV 顎骨壊死、急性腎不全、うっ血性心不全、発熱、関節痛など
ゾレドロン酸 4mgを15分以上かけてDIV
その他 オクトレオチド 0.2〜0.3mg/日 CSC、CIVまたはCS、IV(0.1mg×3 回) 注射部位の硬結・発赤・刺激感など
  ブチルスコポラミン
臭化物
開始量:10〜20mg/日
CSC、CIV
維持量:40〜120mg/日 心悸亢進、口内乾燥、眼の調節障害など
PO:経口、CIV:持続静注、CSC:持続皮下注、DIV:点滴静注
※等力価の他のコルチコステロイド(プレドニン®など)を使用してもよい
表12 鎮痛補助薬のNNTとNNH(NNQ) 
薬剤の種類 文献1より改変引用 Cochrane Review 文献2〜8より引用
神経障害性疼痛全般 中枢性疼痛 末梢性疼痛  
NNT注1(95% CI) NNT注1(95% CI) NNT注1(95% CI) NNH注2(95% CI) NNT注1(95% CI) NNH注3(95% CI) NNQ注4(95% CI)
抗うつ薬 抗うつ薬(全般) 3.3(2.9〜3.8)
3.1(2.7〜3.7) 3.1(2.7〜3.7) 16.0(12〜25)      
三環系抗うつ薬 3.1(2.7〜3.7) 4.0(2.6〜8.5) 2.3(2.1〜2.7) 14.7(10〜25) 3.6(3.0〜4.5)    
SSRI 6.8(3.4〜441) ND 6.8(3.4〜441) ns NA    
SNRI 5.5(3.4〜14) ND 5.5(3.4〜14) ns ND    
アミトリプチリン         3.1(2.5〜4.2) 6(4.2〜10.7) 28(17.6〜68.9)
デシプラミン         2.6(1.9〜4.5)    
イミプラミン         2.2(1.7〜3.22)    
抗てんかん薬 抗てんかん薬(全般) 4.2 (3.8〜4.8) ns 4.1 (3.6〜4.8) 10.6 (9〜13)      
カルバマゼピン 2.0(1.6〜2.5) 3.4(1.7〜105) 2.3(1.6〜3.9) 21.7(13〜79) 2.5(2.0〜3.4) 3.7(2.4〜7.8)  
バルプロ酸 2.8(2.1〜4.2) ns 2.4(1.8〜3.4) ns      
フェニトイン 2.1(1.5〜3.6) ND 2.1(1.5〜3.6) ns   3.2(2.1〜6.3)  
ガバペンチン 4.7(4.0〜5.6) NA 4.3(3.7〜5.2) 17.8(12〜30) 4.3(3.5〜5.7) 3.7(2.4〜5.4) ns
抗不整脈薬 メキシレチン 7.8(4.0〜129) NA 5.2(2.9〜26) ns      
NMDA受容体拮
抗薬
NMDA受容体
拮抗薬(全般)注5
7.6(4.4〜27) ND 5.5(3.4〜14) 12.5(8〜36)      
デキストロメトルファン 4.4(2.7〜12) ND 3.4(2.2〜7.6) 8.8(6〜21)      
オピオイド(参考) オピオイド(全般) 2.5(2.0〜3.2) ND 2.7(2.1〜3.6) 17.1(10〜66)      
ビスホスホネート ビスホスホネート(全般)         11(6〜36)
<4週投与>
7(5〜12)
<12週投与>
  16(12〜27)
ND:
no studies done(研究なし)
NA:
dichotomized data are not available(研究はあるが個々のデータがないためNNTを計算できなかった)
ns:
relative risk not significan(t 有意差なし)
※:
骨転移痛
( ):
95%信頼区間
SSRI;selective serotonin reuptake inhibitor
SNRI;serotonin noradrenaline reuptake inhibitor
注1:
表中NNTの効果指標は、「50%以上の疼痛改善」に準じている
注2:
文献1においては、有害事象のために治療中断となった事例をNNHとして表現しているため、文献2〜8のNNQ(注4)と同様
よって、治療中止に至らない有害事象の発現頻度はより多く、注3を参照のこと
注3:
中断に至らない有害事象
注4:
副作用による中断
注5:
デキストロメトルファン、riluzole、memantineなど
NNT(number needed to treat):1例の効果を得るためにその治療を何人の患者に用いなければならないかを示す指標。
NNH(number needed to harm):何人の患者を治療すると1例の有害症例が出現するかを示す指標。
NNQ(number needed to quit):何人の患者を治療すると1例の副作用による治療中断が出現するかを示す指標。
【文献】
1)
Finnerup NB, Otto M, McQuay HJ, et al. Algorithm for neuropathic pain treatment: an evidence based proposal. Pain 2005; 118: 289-305
2)
Wiffen PJ, Collins S, McQuay HJ, et al. Anticonvulsant drugs for acute and chronic pain. Cochrane Database Syst Rev 2005; Issue 3
3)
Saarto T, Wiffen PJ. Antidepressants for neuropathic pain. Cochrane Database Syst Rev 2007; Issue 4
4)
Bell RF, Eccleston C, Kalso E. Ketamine as an adjuvant to opioids for cancer pain. Cochrane Database Syst Rev 2003; Issue 1
5)
Challapalli V, Tremont-Lukats IW, McNicol ED, et al. Systemic administration of local anesthetic agents to reliece pain. Cochrane Database Syst Rev 2005; Issue 4
6)
Wong R, Wiffen PJ. Bisphosphonates for the relief of pain secondary to bone metastasis. Cochrane Database Syst Rev 2002; Issue 2
7)
Eisenberg E, McNicol ED, Carr DB. Opioids for neuropathic pain. Cochrane Database Syst Rev 2006; Issue 3
8)
Wiffen PJ, McQuay HJ, Edwards JE, et al. Gabapentin for acute and chronic pain. Cochrane Database Syst Rev 2005; Isuue 3
【参考文献】
9)
Lussier D, Portenoy RK. Adjuvant analgesics in pain management. Doyle D, Hanks GWC, Cherny NI, Calman K eds. Oxford Textbook of Palliative Medicine. 3rd ed, Oxford University Press, 2003, p349

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