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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)

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2章 背景知識
4 薬理学的知識
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オピオイド
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非ステロイド性消炎鎮痛薬使用時に注意すべき相互作用(表9)
 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、血漿中では大部分が血漿蛋白と結合した状態にある。したがって、血漿蛋白結合して存在する薬物が同時に投与された場合、遊離型となった薬物の作用が現れる場合がある。
 NSAIDsは主に肝臓において代謝されるため、同一酵素によって代謝される薬物が併用された場合、代謝過程における薬物動態学的相互作用により、酵素に対して結合競合が起こる。その結果、薬物の血中濃度が高まり、作用が強く現れる場合がある。例えば、セレコキシブはCYP2C9 で代謝されるため、同酵素で代謝されるワルファリンの作用が増強され、出血傾向が発現する可能性がある。同様にフェニトイン、スルホニル尿素系血糖降下薬などと併用した場合、それらの作用を増強することが知られている。また尿細管分泌の競合により、メトトレキサート、リチウム、ジギタリス(腎機能低下時)の排泄が遅延し、それらの作用を増強する。NSAIDs は血管拡張作用やナトリウム利尿作用を有するプロスタグランジンの合成を抑制することから、ACE 阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)や利尿薬の効果を減弱させる。
  NSAIDsとニューキノロン系抗菌薬とを併用すると、ニューキノロン系抗菌薬の中枢神経作用であるγ-アミノ酪酸受容体(GABA受容体)応答抑制作用によるけいれん閾値を低下させ、けいれんを誘発することがある。一方、ミソプロストールは、吸収阻害を起こすことにより、ジクロフェナクナトリウムのAUCとCmaxを下降させる。抗血小板療法に伴う低用量アスピリンとNSAIDs、例えばイブプロフェンとの併用では、イブプロフェンによって血小板のCOX-1の活性部位が先に占有されると、アスピリンが血小板の標的部位に結合できないため不可逆的な血小板機能阻害が起こらなくなり、アスピリンの抗血小板作用が発揮されなくなる可能性がある。
表9 主なNSAIDsの相互作用
主なNSAIDs→
↓併用薬





































主な機序
ワルファリン 肝代謝の変化
メトトレキサー       腎排泄の変化
ACE阻害薬         腎におけるプロスタグランジン合成阻害
チアジド系抗利尿薬 腎におけるプロスタグランジン合成阻害
ループ利尿薬 腎におけるプロスタグランジン合成阻害
ジゴキシン           腎排泄の変化
スルホニル尿素薬         腎排泄の変化
ニューキノロン系抗菌薬         ×   受容体結合の変化
ペメトレキセド           腎排泄の変化
ミソプロストール           吸収の変化
↑/↓:併用薬の作用増強/減弱
△/▽:NSAIDsの作用増強
×:エノキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシンのみ併用禁忌、他は併用注意
ニューキノロン系抗菌薬
人工合成された抗菌薬の一系列。細菌のDNA複製に必須の酵素(DNAジャイレースなど)を阻害し殺菌的に作用する。幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌力が特徴(代表的な薬剤としてオフロキサシン,レボフロキサシンなど)。

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