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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)

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2章 背景知識
4 薬理学的知識
1
オピオイド
7
特殊な病態でのオピオイドの選択
1. 腎機能障害
 モルヒネは、肝臓で主にグルクロン酸抱合され、M3GとM6Gに変換される。M6Gは、鎮痛および鎮静作用を示すことが知られている。M3GおよびM6Gはほとんど腎から排泄されるため、腎機能障害患者にモルヒネを使用するとM3GおよびM6Gが蓄積し、鎮静などの副作用への対処が困難になる。そのため、腎機能障害患者にはモルヒネを使用しないほうが望ましい。使用する際は減量あるいは投与間隔を延長する。特に、高度な腎機能障害を有する患者では、モルヒネを使用すべきではない。
 同様にコデインは10%程度がモルヒネに変換され、さらにM3GおよびM6Gに変換されるため、腎機能障害患者にコデインを使用しないことが望ましい。使用する際は減量あるいは投与間隔を延長する。
 オキシコドンは、肝臓で代謝され主にノルオキシコドンおよびオキシモルフォンに変換される。オキシモルフォンは鎮痛活性を有するがごく少量しか生成されない。また、使用する際は十分に注意して慎重な観察が必要である。
 フェンタニルは、肝臓で主に非活性代謝物であるノルフェンタニルに変換される。臨床経験から比較的安全に腎機能障害患者に使用できるが、血中濃度が上昇するため減量して使用する。長期間に及ぶ際は効果および副作用を注意深く観察する必要がある。
2.
 モルヒネおよびその代謝物であるM3G、M6Gは、血液透析時に血液中から一部除去されるが、血液透析後に中枢神経系と血漿との間で再び平衡状態となる。そのため、非透析時にはM3GおよびM6Gが蓄積する。また、血液透析による一時的な血中濃度低下により、透析中あるいは透析後にオピオイドの追加投与が必要になる可能性がある。したがって、透析患者にはモルヒネを使用しないほうが望ましい。
 同様にコデインは前述の理由で、透析患者にコデインを使用しないほうが望ましいが、使用する際は減量あるいは投与間隔を延長する。
 オキシコドンは血液透析時のデータがない。使用する場合は減量あるいは投与間隔を延長する必要がある。また、モルヒネ同様に蛋白結合率が低いため血液中から一部除去され、一時的な血中濃度低下により、透析中あるいは透析後にオピオイドの追加投与が必要になる可能性がある。
 フェンタニルは、投与量の調節なしに比較的安全に透析患者に使用できる。蛋白結合率1が高く透析膜に吸着することがあるため、疼痛の緩和が困難になる場合はオピオイドローテーションを検討する。また、長期間に及ぶ際は注意深く患者を観察する必要がある。
3. 肝機能障害
 モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデインはほとんど肝臓で代謝されるため、肝障害時には代謝能が減少する。したがって、肝機能障害時には投与量の減量あるいは投与間隔を延長して、薬物の蓄積を防止する必要がある。
(国分秀也)
1:蛋白結合率
血漿蛋白と結合している薬物を結合型薬物、結合していない薬物を遊離型薬物という。蛋白結合率とは総薬物量に対する結合型の割合のこと。結合型は生体膜を通過できないため、薬効は遊離型の総量により左右される。
【参考文献】
1)
Dean M. Opioids in renal failure and dialysis patients. J Pain Symtom Manage 2004; 28: 497-504
2)
Murtagh FE, Chai MO, Donohoe P, et al. The use of opioid analgesia in end-stage renal disease patients managed without dialysis: recommendations for practice. J Pain Palliat Care Pharmacother 2007; 21: 5-16

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