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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)

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2章 背景知識
4 薬理学的知識
1
オピオイド
3
投与経路の変更
 オピオイドの基本的な投与経路は経口であるが、口内炎、嚥下困難、消化管閉塞、嘔気・嘔吐などの原因から経口投与が継続できず、投与経路の変更が必要となる場合がある。代替経路としては直腸内投与、経皮投与、静脈内投与がある。注射の場合には一般的に持続投与が行われる。それぞれ使用できる薬物の種類、剤形に限りがあり、またその投与経路による特徴も異なるので、個々の患者に合わせて選択する。
1. 経口投与
 侵襲がなく、簡便で経済的であり、オピオイド投与では基本の投与経路とされる。内服した薬剤は腸管から吸収される際、腸管の酵素によってある程度代謝され、さらに肝臓での初回通過効果(肝初回通過効果1)を受ける。そのために他の経路と比較すると投与量は多く必要で、モルヒネでは代謝産物〔モルヒネ-6-グルクロニド(M6G)2、モルヒネ-3-グルクロニド(M3G)3〕が多くなる。
 口内炎、嚥下障害、消化管閉塞、嘔気・嘔吐、せん妄などで投与継続が困難な場合は他の投与経路に変更する。
2. 直腸内投与
 投与は比較的簡便で、吸収も速やかであるが、投与に不快感を伴うため、長期的な使用は適さないことがある。
 直腸炎、下痢、肛門・直腸に創部が存在する場合、重度の血小板減少・白血球減少時は投与を避ける。
 人工肛門を造設している患者の場合、人工肛門からの投与は、その生体内利用率にばらつきがあると報告されており、長期的な使用は推奨されない。静脈叢が乏しいため吸収が悪く不安定で、薬剤が便と混じりやすく、排出の調節も困難なことなどが理由と考えられている。
3. 経皮投与
 72時間作用が持続するフェンタニル貼付剤が使用されている。この製剤での効果の発現は貼付開始後12〜14時間後であり、貼付中止後(剥離後)16〜24時間は鎮痛効果が持続するので、投与開始時間や中止時間に注意する。
 迅速な投与量の変更が難しいため、原則として疼痛コントロールの安定している場合に使用する。突出痛に対しては他の投与経路でのオピオイド投与が必要となる。
 貼付部位の皮膚の状態が悪い場合、発汗が多い場合は、吸収が安定しないため投与を避ける。また、貼付部位の温度上昇でフェンタニルの放出が増すため、発熱している患者や貼付部位の加温に注意する。
4. 持続皮下注
 侵襲が少なく安全で簡便な投与経路である。投与量の変更が迅速に行えるので、疼痛コントロールの不安定な場合や、急速な用量の調整を必要とする場合に良い適応となる。皮膚からの吸収の上限は一般的に1mL/hとされている。レスキュー・ドーズ4 として早送りした場合にも、痛みを生じない流量での使用を考慮する。
5. 持続静注
 確実・迅速な効果(最大効果は5〜15分)が得られる。他の経路では困難な大量のオピオイド投与も可能である。
 持続皮下注ができない場合(針の刺入部に膿瘍、発赤、硬結ができる)、凝固能の障害がある場合、すでに静脈ラインがある場合に適応となる。
6. 筋肉内投与
 吸収が不安定で、投与の際に痛みが強いため、使用しない。皮下投与、持続皮下注・持続静注を用いる。
1:肝初回通過効果
経口投与した薬物は小腸で吸収され、肝臓を経て全身を循環するが、このとき肝臓に存在する多くの酵素によって薬物が代謝されること。内用剤は肝初回通過効果が大きい。
2:モルヒネ-6-グルクロニド(M6G)
モルヒネの代謝産物の一つ。強力な鎮痛作用を有する。脳移行性がモルヒネよりも低く、ゆっくりと血液脳関門を通過するために作用持続時間が長い。
3:モルヒネ-3-グルクロニド(M3G)
モルヒネが肝臓で代謝されて生じる産物の一つ。鎮痛活性はないが、神経毒性を有しているとの報告もある。
4:レスキュー・ドーズ(臨時追加投与量)
オピオイドが定期投与されている状態で、疼痛時に臨時に追加する、いわゆる「頓用薬」、「疼痛時薬」のこと。「レスキュー投与」とも訳されるが、本ガイドラインではレスキュー・ドーズとした。臨床現場では「レスキュー」と略されることも多い。

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