D-6
タイトル(日本語) 終末期患者への中心静脈栄養
タイトル(英 語) Total Parenteral Nutrition for a Terminally Ill Patient?
著者名 Fainsinger RL, Chan K, Bruera E
雑誌名,巻:頁 J Palliat Care. 1992; 8: 30-32
目 的

終末期患者への中心静脈栄養(TPN)の適応について考える。

研究デザイン 症例報告
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 記載なし
対象患者 例数:1
介 入

主要評価項目(定義)・
統計学的手法
結 果 症卵巣腺癌の腹腔内転移を来たした28歳の女性患者は激しい痛みを主訴に緩和ケア病棟に入院してきた。患者は鼠径部、下腹部、腰に継続する鈍痛、また両下肢と腹部に燃えるような痛みを訴えた。入院して来た日まで5日間便秘が続き、繰り返す嘔気、嘔吐に悩まされていた為、必要に応じて胃瘻より胃内容物をドレナージしていた。入院時患者はHydromorphone 80mg/hourを継続的に静脈点滴していた。入院に際して静脈点滴は皮下点滴に変更され、Hydromorphoneは最大 120mg/hourまで増加されたが、疼痛コントロールはうまくいかず、痙攣発作をおこした為、もとの80mg/hourに減量された。Hydromorphoneの減量と共にMethadoneの座薬投与を開始し、Hydromorphoneは60mg/hourに減らされた。腫瘍の増大がみられ、腹部X線によって明らかにされた顕著な便秘に対して様々な手段が用いられたが、全て不成功であった。入院1週間後に行われた2回目の腹部X線の結果、完全な消化管閉塞が明らかになった。症状緩和がうまくいっていないにもかかわらず、患者とその夫は消化管閉塞が命に関わる合併症であるという事実を受けいれられなかった。患者とその夫はさらなる治療の選択肢を求めた為、外科的手術への適応が考慮されたが、外科医は成功の見込みは少ないと告げた。その後TPNの適応の是非が家族も含めて話し合われたが、その最中に患者は腸穿孔による敗血症性ショックをきたし、数時間後に亡くなった。
結 論

本症例において、TPNが患者への利益となったかどうかは明らかではないが、我々が患者にTPNを行うかの選択権を与える事が出来ていたかどうかは疑わしい。倫理的見解によると、我々が治療方針の決定の際に、患者やその家族を含めたことは正当化されるだろう。患者ケアに携わった一部のスタッフが抱いていたような症状緩和の不成功や患者の低いQOLなどの懸念に関わらず、治療方針の選択肢を患者としっかりと話し合い、患者自身のQOLに何が最善かといった判断を患者自身に委ねる義務があった。

コメント 終末期患者へのTPNの適応の是非を述べるだけではなく、患者の自律性を尊重し、そのひとの信念や価値観、人生計画に添った自己決定を尊重することが重要であることを主張する論文である。
作成者 坂本沙弥香、浅井 篤