D-5
タイトル(日本語) 倫理的問題:症例検討
タイトル(英 語) Ethical Dilemmas: A Case Study.
著者名 Bodinsky GN
雑誌名,巻:頁 Gastroenterol Nur. 1991; 13: 206-8
目 的

経鼻的栄養チューブの再挿入に関する患者の意思が不明瞭であり、家族と医師の意向が対立する場合の倫理的問題を、症例検討をもとに考察する。

研究デザイン 症例報告
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 記載なし
対象患者 例数:1
介 入

主要評価項目(定義)・
統計学的手法
結 果 48歳の女性で、正看護師の患者は終末期の転移性悪性黒色腫による呼吸困難、嘔吐のため入院した。入院した時点で癌は眼球、肺、胃、脳へ転移しており、患者は失明していた。患者は常に臥床で便の失禁があった。患者の容態にもかかわらず、患者の夫は酸素の投与と、人工的水分・栄養補給などの延命治療を望んだ。しかしケアに携わる医師たちは、人工的栄養補給は不適切であると主張し、主治医によるDNRの指示が、夫のサインのないままカルテに添付された。患者は入院中に自ら静脈点滴のルートを抜去して、ルートの再挿入をしないように希望した。そこで主治医は静脈点滴のルートを再挿入しないことに同意したが、結局、夫の要求でルートは再挿入された。主治医は空腸瘻の再挿入を望むかどうかを患者に尋ねたが、患者は首を振り、質問に答えることを拒否した。医師らはこれ以上の医療的介入は患者の利益にならない為、患者は在宅ホスピスのケアを受けるべきであると告げた。
結 論

本症例から4つの倫理的問題が浮かび上がる。まず一つ目はどの時点で人工的水分・栄養補給が無益な医療となるか?二つ目は、医師のDNRの指示は配偶者の決断を覆すものであっても良いか?三つ目は、医師は終末期患者に対してどのような義務があるか?最後の問題は、誰が患者の擁護者となるのか?である。
 これらの問題はその患者自身のQOLとは何かというものを含んだコミュニケーションによって解決できると考える。患者の意思は主治医や家族にも表現されなければならない。そして医師と家族の話し合いの際にリビングウィルも考慮されることが望ましい。リビングウィルが得られないような状況においては、患者やその配偶者と、主治医によるDNR指示が必要になる。いつDNR指示に関する話し合いを持つべきかを調査した研究がいくつかあるが、それらの研究の主な目的は、患者の状態が悪化してしまう前に患者が話し合いに参加できることを保証することである。その目的を果たすためには患者には三回の機会が与えられる。まず一回目は初診の際。二度目は、外来受診の際、最後のチャンスは、終末期ケア病棟に入院する際である。患者の意思決定がいつどのような場で起ころうとも、患者とその家族を含んでおり、その合意は患者が末期状態に陥ってしまう前に行われるべきであるということが全ての研究で主張されている。
 終末期患者には医療システム内に代弁者が必要である。患者自身が主張できない場合には、選任された代弁者が患者の希望がわかっていて、断固とした姿勢で患者を擁護できることが望ましい。

コメント 患者の意思表示がはっきりしない際の倫理的判断は非常に難しいものである為に、患者が自身の意思を表明できる段階で患者、家族、医療チームの見解の一致が図られるべきである事がよくわかる症例報告である。
作成者 坂本沙弥香、浅井 篤