D-4
タイトル(日本語) 高齢末期癌患者への人工的水分・栄養補給に対する倫理的意味付け:国際的見解
タイトル(英 語) Ethical reasoning associated with the feeding of terminally ill elderly cancer patients: An international perspective.
著者名 Bonnie Davidson, Rika Vander Laan, Miriam Hirschfeld, Astrid Norberg, Elizabeth Pitman, Lin Ju Ying, and Liora Ziv
雑誌名,巻:頁 Cancer Nurs. 1990; 13: 286-292
目 的

癌看護の経験があり熟練した8カ国の看護師の高齢末期癌患者への人工的水分・栄養補給に対する倫理的判断を調査する。

研究デザイン 横断研究
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 国立台湾大学病院のホスピス・緩和ケア病棟
対象患者

正看護師 169名

オーストラリア(年齢35歳、経験年数14年)、カナダ(32歳、11年)、中国(31.4歳、11年)、フィンランド(41.5歳、17年)、イスラエル(不明)、スウェーデン(42.5歳、18年)、アメリカ合衆国のアリゾナ州(40歳、不明)とカリフォルニア州(不明)それぞれ約20人ずつ

介 入

なし

主要評価項目(定義)・
統計学的手法

質問紙を用いたインタビュー調査

質的分析

結 果

看護師の倫理的判断は国によって異なり、判断の基となる倫理原則も異なった。

アリゾナ、カナダ、スウェーデンの研究対象者は全員、意識が清明であり、判断能力がある高齢終末期癌患者が人工的水分・栄養補給を拒否している場合には、人工的水分・栄養補給しないと答えた。オーストラリア、カリフォルニア、フィンランドの3地区ではほとんどの研究対象者が条件で与えられた高齢終末期癌患者に人工的水分・栄養補給しないと答えた。しかし、中国では、全ての研究対象者がそのような高齢終末期癌患者に人工的水分・栄養補給を行うと答えた。

研究者は、人工的水分・栄養補給を「行う」か「行わないか」のどちらかを選択するように強いたが、看護師のほとんどは、その中間も答えとしてあると主張した。その例としては、氷をなめてもらう、入念なマウスケアを行うなどがあり、患者の安楽と、症状緩和に対する懸念を示した。

人工的水分・栄養補給を行わないと判断した看護師の多くは、自律の倫理的原則に則っており、それはインタビューの過程で一貫性が見られた。患者の意思決定能力の有無は患者の希望を知る手がかりとなる為、看護師の判断に大きく関連しているようであった。

中国の研究対象者の20人のうち6人は善行の原理に従って、人工的水分・栄養補給を行うと答えた。中国の看護師は、中国の文化に則って患者は長く生きるほどよいという理念に則っているようであった。のこりの14人は倫理的原則ではなく、経静脈的な輸液や経鼻チューブを用いて人工的水分・栄養補給できることを人工的水分・栄養補給を行う理由としていた。

結 論

各国の看護師らの決断に影響を及ぼしていた主要な要素は、患者の安楽と、患者が食べ物や水分摂取に対して抱いている思いの比重であった。本研究に参加した多くの看護師は、倫理的判断を下すにおいて、患者の容態や、その患者の現在の精神的状況に関するより多くの情報が必要であったと答えた。

人工的水分・栄養補給には二つの潜在的要素が含まれている。ひとつは基本的なケアを与えるという意味であり、もうひとつは、延命治療としての意味である。つまり、患者に食べ物を与えるという行為と、人工的水分・栄養補給をするという行為とは概念的に異なっている。

インタビューに答えた看護師の中から、人工的水分・栄養補給を差し控える、もしくは中止することによって、患者が苦しむのではないかと懸念する意見があった。先行研究から、終末期に患者の身体が脱水状態であることは苦痛ではないと報告されているが、看護師らがそのような懸念を示したということは、知識をもたないからであろう。
看護師は看護師以外の医療者や、患者とその家族と現在の医療について話せる機会がもてるセミナーや、ワークショップ、倫理学講義に参加する必要がある。
コメント 各国間の比較は不明瞭で、各国の看護師らの倫理的判断の特徴は十分に述べられていない。
作成者 坂本沙弥香、浅井 篤