D-2
タイトル(日本語) 終末期がん患者へ食物を与えることを裏付ける倫理的根拠
タイトル(英 語) Ethical reasoning concerning the feeding of terminally ill cancer patients: Interviews with registered nurses experienced in the care of cancer patients.
著者名 Jansson L, Norberg A
雑誌名,巻:頁 Cancer Nurs. 1989; 12: 352-358
目 的

食べることを拒否している意識清明な高齢末期がん患者は食べ物を与えられるべきか?という問いに対する答えにどのような説明付けをするか?また、倫理の4原則にどのように順位をつけるか?という問いかけに対して、経験のある看護師の用いた倫理的根拠を解明する。

研究デザイン 横断研究
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 国立台湾大学病院のホスピス・緩和ケア病棟
対象患者

・経験があり熟練した20名の正看護師
・スウェーデン北部の癌病棟、内科病棟、外科病棟15人、5人の修道女

介 入

なし

主要評価項目(定義)・
統計学的手法

食べることを拒否している意識の清明な高齢終末期がん患者への治療についてインタビューを行った。

質的分析

結 果

20名の全ての研究参加者は食べることを拒否している意識の清明な高齢終末期がん患者に対して人工的水分・栄養補給を行わないと答えた。

看護師の中には、患者に摂食を促す際に「力ずく」でと答えたものはいなかった。

全ての参加者は決断の根拠を示した。11名は自律の原則に基づいていた。他の5名は自律、善行、無危害の原理に基づいていた。他の3名は自律と生命の神聖さを根拠に挙げ、1名は善行の原理のみに基づいていた。

20人中12名の参加者は医療者として自律の原理に基づいて判断することが一番重要であると答えたが、倫理の4原則にどのように順位をつけ、それをどう根拠付けるかという問いかけへの返答は非常に困難であったと答えた。20名の看護師すべてが、置かれた状況によって、その順位は変わるものであると答えた。

研究参加者は異なった状況下において、患者にどのようなケアをするかという各々の判断に確信があるようだったが、それを裏付ける根拠を指し示すことは困難なようであった。

参加者の中の何人かは、末期患者へのケアの経験の重要性を主張し、キリスト教の黄金律に則るべきであると答えた。

結 論

それぞれの看護師は自分の経験か、もしくはキリスト教の黄金律に則ってその問いに答えたと推測する。熟練した看護師は一般的に、論理的考察よりも先に自身の経験を優先する傾向があるため、終末期がん患者へ食物を与えることを裏付ける倫理的根拠よりも、終末期患者へのケアの経験の重要性を主張したのだろう。

全てのインタビュー対象者は異なった状況下において、患者にどのようなケアをするかという各々の判断に確信があるようだったが、倫理原則に関して考察することには困難を伴った。それには二つの要因が考えられる。一つ目には、看護師が倫理的考察の手段を熟練していないことが挙げられ、二つ目には先行研究で述べられているように、倫理原則に則った考察が看護の実践に相応しいものではないからかもしれない。

コメント 高齢末期癌患者への看護の実践、特に人工的水分・栄養補給への検討においてどのような倫理的考察が必要とされるのか、また看護師が行った倫理的判断への裏付けとはどのようなものかを調査した結果を提示している。
作成者 坂本沙弥香、浅井 篤