D-14
タイトル(日本語) 在宅静脈栄養:倫理的意思決定のジレンマ
タイトル(英 語) Home parenteral nutrition: an ethical decision making dilemma.
著者名 Breier-Macike S, Newell CJ
雑誌名,巻:頁 Aust J Adv Nurs. 2002; 19: 27-32
目 的

終末期患者への人工的水分・栄養補給の中止に関する様々な倫理的見解を示し、終末期患者の身体に見られる生理学的変化についても説明する。

研究デザイン 症例報告(ナラティブ分析と倫理的考察)
エビデンスレベル Not applicable
研究施設
対象患者

介 入

主要評価項目(定義)・
統計学的手法
結 果

 考察対象になっている患者は74歳女性で、泌尿器系癌による吸収不良症候群と放射線腸炎で経口摂取不能となり、自宅で在宅静脈栄養治療(HPN)を受けている。
 本事例において、HPNの副作用には、持続的嘔気・嘔吐、制御不能な電解質異常から来る重度の不快感があった。また心理的に自宅を機械に占拠されることによるイライラ、挿入部位のトラブル、感染症、代謝異常などの医学的合併症のリスクもあった。本事例ではHPNによる延命効果はあったが、患者の不快、不安、苦痛から結果的に患者のQOLは著しく低下した。
 HPN施行の判断は極めて複雑であり、賛否両論がある。全人的ケアにおける患者のQOLを勘案した上での、患者の自律が重要である。

結 論

 倫理的観点からのTPN使用促進論には、TPNは基本的なケアでやめてはならない、栄養は人生に必須なもの、ルーチンの緩和ケアである、TPNの提供は患者の尊厳を維持する、患者医師関係の信頼を増強する、「食べ物」は感情的シンボル的に人間関係の絆である等があり、これらの見解から代理判断者は決してTPNを拒否できないという結論が導かれる。また、希望(hope)と関連させる議論もある。すなわち、人間存在には希望が必要であり、希望なくしては進行がん患者は絶望してしまうので、TPNが重要とする見解である。
 一方、倫理的観点からのTPN使用反対論には、患者の利益になる証拠がない、TPNも延命治療の一形態であり人工呼吸器や透析と同じように中止できる、侵襲的である、通常の「食べる」という人間的行為とTPNを同等のものと考えることはできない、などがある。
 人によっては利益を得るが、それには合併症とQOL低下を伴う場合がある。患者のQOLは患者本人にしか判定できない。
 西洋社会には患者の治療拒否の権利是認についてコンセンサスがある。一般的ガイドラインとして、患者が終末期状態に至ったり不可逆的増悪過程に入ったとき、TPNが合併症や苦痛を生じさせるとき、またはTPNを受けている側の個人(患者または代理人)が要求した場合、TPNは減量・中止できる。

コメント 詳細なTPNのpros &cons議論が提示され、患者の権利と主観的QOL判定、そして患者の尊厳を根拠にTPNの中止が提言されている。
作成者 浅井 篤